幼少期より機械やものづくりに興味があり、学生時代は機械工学を専攻していました。当時から運転するのが好きだったので、就職活動を迎えると、クルマづくりを志望するようになりました。といっても、特定の自動車メーカーや車種などに入れ込んでいたわけではありません。そんななかSUBARU車に関しては、地元が東北の雪深い地域ということもあって街中で見かけることが多く、もともと親近感がありました。より志望度が高まったのは、アイサイトに代表されるように、安全機能に注力していることを知ったから。ものづくりへの真摯な姿勢に好感を持ち、入社することに決めました。

デザインCADを使用し、3Dで意匠面データを作成するデジタルモデラーの仕事です。デザイナーが描いたスケッチを3次元化したり、クレイモデラーが工業用粘土で造形したクレイモデルから、設計・製造側の各種要件を織り込んでデータをつくりあげたりしています。目に見える、手で触れられる部分のほとんどすべてを作成対象とする3D意匠面データですが、そのなかで私はドアやライト、ホイールといったエクステリア部品を担当しています。大切なのは、クルマ1台で見たときに全体として調和が取れていること。例えば、柔らかい印象のクルマを目指しているのに、一部分だけ硬質だと違和感が生じてしまうからです。全体のプロポーションにどう影響するかをつねに意識しながら、関連部署と密に連携しながら進めています。

数々の制約を乗り越え、自分が携わったクルマを世に送り出したときです。デジタルモデラーが作成したデータは、デザイン部としての最終アウトプット。とても重要な立場を担います。意識するのは、いかにして起点となるデザイナーの意図を反映させられるか。同時に、いかにして性能や品質などを担保したい設計者の思いも反映できるか。相異なる要求に応えるのは大変ですが、両者の考えを汲み取り、1つの商品として魅力を高めていくことに責任とやりがいを感じます。自分の担当したパーツが世に出たときは、この仕事をやっていて良かったと思う瞬間です。

細部へのこだわりです。あるお客様にとっては目立たない箇所も、別のお客様にとっては気になる可能性がある。だから、どんなささいな微調整でも疎かにはできません。いざお客様が見たときに残念に思われたくないので。やりきったと思っても、改めてフラットな目で見て、再度修正。その繰り返しです。少しでもお客様に満足していただけるよう、完璧を追い求めています。「隙間」の見え方はこだわるポイントのひとつ。パーツ単体だけでなく、パーツとパーツの取り合わせも、全体の印象に大きな影響を及ぼすからです。もちろん、隙間はなるべく小さいほうが見栄えは良くなります。いかに隙間を縮められるか、ギリギリの調整に取り組んでいます。

機械系出身で絵が苦手。工業系CADも苦手。そんな私にとって、デザイン部に所属し、デジタルモデラーの仕事をすること自体が大きな挑戦でした。最初は、デザインのニュアンスを伝えるためのスケッチを描いても、なかなか意図が伝わらず、CADの操作にも手を焼きました。それでも経験を重ねるなかで、相手に伝わるスケッチが少しずつ描けるようになり、CADの操作にも慣れていきました。その後、スキルが上がるにつれて、小さい部品から、より大きくて目立つ部品へと担当範囲を拡大。現在は、デザイナーからの感覚的な要求を汲み取ることに難しさを感じています。たった1ミリ削っただけでも、受ける印象は微妙に変わるんです。そこを1000分の1ミリ単位で調整していくのが、日々の挑戦でもあります。

学生時代に芸術・デザイン専攻じゃない方でも、デジタルモデラーとして活躍することができます。私自身、学生時代は機械工学を専攻していましたし、絵心もありませんでした。動物なんかを描かされようものなら、壊滅的でしたから（笑）。それでも畑違いのデザイン部に所属し、実務を通してカーデザインを知り、覚えていきました。皆さんもぜひ、学生時代の専攻にとらわれず、「畑違い」の分野も視野に入れて挑戦してみてください。