主要な事業等のリスク

当社グループの経営成績および財務状況、キャッシュ・フロー等に数百億円以上の大きな影響を与え、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事業等のリスクと対応策は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、当社グループに関するすべてのリスクを列挙したものではありません。

経済・金融環境の変動に関連するリスク

(1)主要市場の経済動向

当社グループの主要な市場である国および地域の経済情勢は当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。国内はもとより、当社グループの売上収益の約7割を占める北米における景気の後退や需要の減少、価格競争の激化等が進むことにより、当社グループの提供する商品・サービスの売上収益や収益性に大きく影響を及ぼす可能性があります。

(2)為替の変動

当社グループにおいて北米売上収益は約7割を占め、売上収益、営業利益、資産等の中には、米ドルを中心とした現地通貨建ての項目が含まれており、連結財務諸表作成時に円換算しています。通期の業績見通しにおいて想定した為替レートに対し、実際の決算換算時の為替レートに乖離が生じた場合、主に円高局面では当社グループの売上収益と財務状況はマイナスに作用し、円安局面ではプラスに作用する可能性があります。当社では為替リスクを最小限にすべく、状況に応じ為替予約等によるヘッジを実施していますが、期末日に極端な為替変動が生じた場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

(3)金融市場の変動

当社グループは、事業活動の資金を内部資金および金融機関からの借入や社債の発行によって確保しています。また、十分な手元流動性を確保するために、一定額の現金及び現金同等物残高の確保を行っています。しかし、経済・金融危機等の発生により金融市場から適切な条件で資金調達が出来なくなった場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは市場性のある証券や債券等の金融資産を保有しており、金融市場の影響により公正価値や金利等が著しく変動した場合、金融資産の減損および年金資産の減少による従業員給付債務の増加により、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

(4)原材料価格の変動

当社グループは、原材料を多数のお取引先様から適時適切な量で調達していますが、特定の原材料およびお取引先様に依存している場合があります。2021年度は各種原材料が高騰したことを受けて、貴金属については材料の性質や機能を維持しながら原材料の使用量の調整を行う等、変動影響の軽減に取り組んでいます。今後も引き続き、原材料価格の高騰が続くと見込まれ、さらなる需給状況のひっ迫等が発生した場合は、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

業界および事業活動に関連するリスク

(5)特定の事業および市場への集中

当社グループは、主に自動車と航空宇宙の2つの事業で構成され、“お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指し、選択と集中を進め、限られた経営資源を最大限活用することで高収益なビジネスモデルを展開しています。自動車事業の売上収益が9割以上を占め、販売市場は主に北米を中心とした先進国です。また、主要拠点である国内の群馬製作所および米国のスバル オブ インディアナ オートモーティブ インク(SIA)においては、SUV(多目的スポーツ車)を中心とした生産をしています。このため、自動車事業に関わる需要や市況、同業他社との価格競争等が予測し得る水準を超えて推移した場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

(6)市場における需要・競争環境の変化

当社グループの主力事業である自動車業界は大きな環境変化を迎えており、モビリティサービスの普及に伴う異業種からの参入や環境対応に伴うガソリン車以外の自動車へのシフト、シェアリングや自動運転普及に伴う移動手段の多様化によって、お客様の価値観や嗜好ニーズはさらに多様化していくことが予想されます。このような状況のなか、当社グループは中期経営ビジョン「STEP」を推進し、安心・安全への取り組みやアライアンスの強化、強固なブランドの構築を推進することで新たなモビリティ領域への対応、商品の環境性能向上を強化しています。直近では、電動化に向けた国内工場の生産体制再編計画を発表する等、常に市場の需要動向を捉え、お客様ニーズに基づく商品企画を行い、適切なタイミングと価格で新商品を開発・製造し、市場に投入することに努めています。また、デジタルイノベーションの強化に向け最新のデジタル技術やデータの戦略的活用によるビジネスプロセスの改革、新たなビジネスイノベーションの機会創出と推進を行っています。このような取り組みの一方で、当社グループの新型車や新商品が販売計画に満たない場合、デジタルイノベーションに遅れが生じた場合、現行の商品の陳腐化等が想定以上に早く進んだ場合には、販売台数の減少等により当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

(7)商品ならびに販売・サービスに関する責任

当社グループは、品質の高さをSUBARUブランドの大事な根幹、付加価値の源泉であると位置づけており、中期経営ビジョン「STEP」において、「品質改革」を重点取り組みの一つとして活動を進めています。この取り組みは着実に進捗しており、現在は新技術への対応を含め、品質改革の取り組み結果を実績で示すフェーズとして3つの切り口で活動を推進しています。1つ目は「品質最優先の意識の徹底と体制強化」です。「品質方針」の見直しや品質マニュアルを刷新することにより、SUBARUの目指す姿を再定義し全社での啓発活動や振り返り活動を行うことで、従業員一人ひとりの品質意識の変革を促しています。2つ目は「つくりの品質の改革」で、生産準備以降の領域において不具合の流出防止を目指すものです。これには市場で発生させてしまった不具合に対して、迅速な解決策を講じることも含まれます。3つ目は「生まれの品質の改革」で、初期の検討段階から開発・設計に至るプロセスを改革し、開発最上流から生産・物流まで一気通貫で品質を確保します。
このような品質改革への取り組みの一方で、大規模なリコール等が起こった場合、多額のコストとして品質関連費用等が発生することに加え、ブランドイメージの毀損等により、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

(8)サプライチェーンの分断

当社グループは、自動車や航空機等の製造にあたり、多数のお取引先様から部品や材料を調達しています。定期的にお取引先様の品質保証力や供給能力のチェックを行うとともに、必要に応じお取引先様の経営状況のチェックも行い、安定調達に努めています。また、有事が発生した際は、平時より整備をしている一次・二次お取引先様の部品ごとの「サプライチェーン情報データベース」に基づき、影響を受ける可能性のあるお取引先様や部品を早期に特定することにより、生産継続に必要な在庫数の確認や代替品の生産検討、さらには生産設備の復旧支援を行う等、サプライチェーン分断の影響を最小限に留める対応を取っています。しかしながら、大規模な地震や台風等の自然災害、新型コロナウイルス等の感染症の発生やその他の要因により、サプライチェーンの分断や需給のひっ迫が発生した場合、安定したコスト・納期・品質で調達が維持出来ず、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
なお、2021年度は昨年から続いている世界的な半導体の供給不足に加え、東南アジアでの新型コロナウィルス感染症拡大の影響等に伴い、当社においてもお取引先様から調達している部品の一部で供給に支障が出たことから、一部の工場で2021年1月、4月、9月、12月、2022年1月、2月において数日間、工場の操業を停止する等の生産調整を行いました。半導体製品の供給状況に合わせて生産する車種を変更する等の対応により、お客様への商品の提供に努めていますが、今後も半導体および一部の部品の供給不足は続くと見込まれ、操業停止や生産調整を通じて、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

(9)知的財産の侵害

当社グループは、製品やサービスを通じてお客様に「安心と愉しさ」という価値をお届けするために必要な技術・ノウハウ等を知的財産として保護し、SUBARUのブランド価値の維持・向上に努めています。しかしながら、第三者が当社グループの知的財産を不当に使用した類似製品を製造した場合や、知的財産に関わる訴訟等が生じて当社に不利な判断がなされた場合には、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

(10)情報ネットワークセキュリティ

当社グループは、製品の開発・生産・販売等、事業活動において情報技術やネットワーク、システムを利用しています。これらの資産を守るためにサイバーセキュリティ基本方針を定め、従業員の意識向上に向け、セキュリティ教育を定期的に実施するとともに、IT戦略部門が中心となり、サイバー攻撃検知の迅速化を図るための監視とセキュリティインシデント発生時のSIRT(Security Incident Response Team)体制を整備しています。データのバックアップについては、当社データセンター内の自社運用ならびにクラウド環境において、複数箇所に分散しバックアップが取れる体制を整えており、局所的な災害等においても、事業継続や復旧の早期化に向けた対策を講じています。当社グループの情報技術やネットワーク、システムは、安全対策が施されているものの、サイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウイルスによる攻撃、大規模な停電、火災等が発生した場合、重要な業務やサービスの中断、データの破損・喪失、機密情報の漏洩等が発生し、ブランドイメージの毀損や当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

(11)コンプライアンス

当社グループは、中期経営ビジョン「STEP」において、「組織風土改革」を重点取り組みの一つとして掲げ、活動を加速してきました。特に、コンプライアンスの徹底を経営の最重要課題の一つと位置付け、法令・社内諸規程等の遵守はもとより、社会規範に則した公明かつ公正な企業活動を遂行することを従業員一人ひとりに浸透させるべく、コンプライアンス体制・組織の構築および運営、ならびに各種研修等の活動を行うことにより、コンプライアンスリスクの回避または最小化に努めています。それにも関わらず、当社グループおよび委託先等において重大な法令違反等が発生した場合、お客様の信用・信頼を失うことや社会的評価・評判の低下等によるブランドイメージの毀損等が事業基盤に重大な影響を与え、経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

(12)ステークホルダーコミュニケーション

当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図り、全てのステークホルダーから満足と信頼を得るために、コーポレートガバナンスガイドラインを定め、コーポレートガバナンスの強化を経営の最重要課題の一つとして取り組んでいます。また、ディスクロージャーポリシーに基づき、フェアディスクロージャーに努め、法令に基づく開示を行っています。さらに、経営戦略や事業活動等の当社を深く理解していただくために有効と思われる会社情報を、迅速、公正公平、適正に開示しています。また、株主・投資家等と中期経営ビジョン「STEP」の進捗やESG情報について建設的な対話を図るとともに、社内関係者へのフィードバックを行う等ステークホルダーコミュニケーションの向上に努めています。しかし、インサイダー取引等の不公正取引や虚偽記載等の法令違反行為による巨額の課徴金支払い等が発生した場合は、株主や投資家をはじめとしたステークホルダーからの信用・信頼を失うことや社会的評価・評判の低下等によるブランドイメージの毀損等が事業基盤に重大な影響を与え、経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

(13)人権尊重

当社グループは人を第一に考え、「人を中心としたモノづくり」を行っています。「一人ひとりの人権と個性を尊重」することは、「人・社会・環境の調和」を目指して豊かな社会づくりに貢献したいという、SUBARUの企業理念を実現するための重要な経営課題と捉え、「SUBARU人権方針」を策定するとともに、同方針をもとに、人権デュー・ディリジェンスを実施しています。また、サプライチェーンを含め、事業に関連するビジネスパートナーやその他の関係者にも、本方針に基づく人権尊重の働きかけを行い、リスク低減のための様々な対応策を実施することで、人権尊重の取り組みを推進しています。それにも関わらず、当社グループおよび上記関係者において、労働環境・労働安全衛生上の問題、様々なハラスメント、労働者の権利・機会の侵害、人権上の問題のある調達等を行った場合には、お客様の信用・信頼を失うことや社会的評価・評判の低下によるブランドイメージの毀損等が事業基盤に重大な影響を与え、経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

(14)人材の確保と育成

当社グループは、持続的な成長に向けて、中期経営ビジョン「STEP」にて掲げたありたい姿「笑顔をつくる会社」への実現に向けて人材育成を極めて重要なテーマと位置付けています。企業としての競争力強化を高めていくために、「SUBARUへの共感のもと、自律的に行動しチャレンジし続ける人材」を求める人材像とし、会社の風土や従業員の意識・行動の変革を目指して、自律的な能力開発とチャレンジにより個人の成長を促す体制を整備しています。
人材確保においては、電動化対応、先進安全技術の進化、IT分野の強化といった専門領域での人材確保のため、これまで以上に積極的な採用を行っています。
また、独自の価値創造を実現し続けるため、様々な個性や価値観を持つ従業員が個々の能力を十分に発揮できるよう、 性別・国籍・文化・ライフスタイル等の多様性を尊重するとともに、分け隔てなく登用し、働きやすい職場環境の整備に努めています。
しかし、労働市場のひっ迫、異業種も含めた人材獲得競争の激化、コンプライアンス事案につながるような労務問題等の発生により人材の確保ができない場合、あるいは人材の流出が続いた場合は、当社グループの事業活動や経営に影響を及ぼす可能性があります。同様に、人材の育成が不十分な場合や、従業員の多様性が尊重された誰もが活躍できる職場環境が実現できない場合においても、当社グループの事業活動等に影響を及ぼす可能性があります。

(15)気候変動

当社グループは、気候変動への取り組みを最も重要な課題の一つとしており、気候変動に関連する「政策・規制」「技術」「市場」等の移行リスクに関して、将来予測等を行い不確定な気候変動リスクの認識に努めています。
また、2050年カーボンニュートラルを目指し、「長期目標」およびそのマイルストーンとして「中期目標」を策定し、目標達成に向けて取り組んでいます。さらに、2050年に向けたロードマップを加速させるべく、電動車開発の拡大・加速を見据え、BEVへの移行期の柔軟な対応および高効率な生産による事業性向上を狙いとした、国内生産体制の戦略的再編を実施し、2024年3月期より5年間で2,500億円の投資を予定しています。当社グループは、お客様にご満足いただける、お客様を笑顔にできる商品開発や市場環境を踏まえた柔軟性のある生産体制の整備を引き続き進めていきます。

カテゴリー 時期 目標
商品
(スコープ3)
2050年 Well-to-Wheel*1で新車平均(走行時)のCO2排出量を、2010年比で90%以上削減*2
2030年代前半 生産・販売するすべてのSUBARU車に電動技術を搭載
2030年まで 全世界販売台数の40%以上を、EV(電気自動車)+ハイブリッド車にする
工場・オフィス
(スコープ1、2)
2050年度 カーボンニュートラルを目指す
2030年度 CO2排出量を、2016年度比30%削減(総量ベース)
*1:
「油井から車輪」の意味。EV等が使用する電力の発電エネルギー源まで遡って、CO2排出量を算出する考え方を指す。
*2:
2050年に世界で販売されるすべてのSUBARU車の燃費(届出値)から算出するCO2排出量を同2010年比で90%以上削減。総量ベース。

当社グループは、持続可能な事業活動を行うため、原材料調達、製造、輸送、使用、廃棄という当社の事業活動のライフサイクル全体で排出されるCO2の削減を通じて脱炭素社会の実現に貢献していきます。しかしながら、これらの取り組みが適切に進まない場合、あるいは現時点での将来予測が極めて困難な気候変動リスクの影響および発現によっては、研究開発費用等の増加、顧客満足やブランドイメージの低下等による販売機会の逸失により、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

その他事業活動に影響を与える各国規制やイベント性のリスク

(16)事業活動に影響を与える各国の政治・規制・法的手続き

当社グループは北米を中心に世界各国において事業を展開しています。海外市場での事業活動には、以下のようなリスクが内在しており、当該リスクが顕在化した場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

  • 不利な政治、経済的要因
  • 法律または規制の変更
  • 課税、関税、その他の税制変更

また、環境等に関して当社グループが受ける主な法的規制は、国内外ともに自動車の燃費、排出ガス、省エネルギーの推進、騒音、リサイクル、製造工場からの汚染物質排出レベルおよび自動車等の安全性に関するものです。今後、法的規制が強化されることによるコスト等の増加が、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

(17)災害・戦争・テロ・感染症等の影響

当社グループは特に、経営に重要な影響を及ぼしかつ通常の意思決定ルートでは対処困難な緊急性が求められるクライシスリスク、自然災害・事故・内部人的要因・外部人的要因・社会的要因(国内・海外)・コンプライアンスリスクに分類し、有事の際に最適な対応ができる体制を整備しています。しかしながら、事業継続に影響を及ぼす災害・戦争・テロ・感染症等の発生により、当社グループの事業活動が妨げられ、原材料・部品の購入、生産、製品の販売および物流、サービスの提供等に遅延や停止が生じる可能性があります。このような遅延や停止が長期化する場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
 なお、ロシア・ウクライナ情勢に関する当社グループへの影響については、当該地域での現地生産を行っておらず、販売規模も小さいことから現時点では限定的と見込んでいますが、当社製品に使用する調達部品や原材料等の供給について引き続き状況を注視していきます。