「SUBARUらしさ」を
際立たせる技術
安心と愉しさ

2020年1月20日に実施したSUBARU技術ミーティングの資料と発表内容に基づいた記述としています

知能化技術の活用で
目指すこと

「安心と愉しさ」を支えるのはSUBARUのコア技術であるスバルグローバルプラットフォーム。そして、これからの「安心と愉しさ」の柱となるのは、このスバルグローバルプラットフォームと知能化技術の融合であると考えています。運転者の状態を見守り、ドライバーの認知・判断・操作を修正、そして知能化によって万が一の被害を軽減する。知能化技術で「安心と愉しさ」を進化させ、 「SUBARUらしさ」を極めていきます。

走行性能の
動的質感

クルマの基本性能とも言える走行性能の動的質感には、今後も徹底的にこだわります。目指すのは「あらゆる環境下でも誰もがコントロールしやすく、意のままに操れること」です。AWDは、1972年のレオーネエステートバンからスタートしたSUBARUの得意とする技術です。誰が運転しても、熟練したドライバーのように運転できるAWD技術を目指しています。

動的質感は、2016年からスバルグローバルプラットフォームに織り込んでいますが、これをさらに進化させていきます。
そのポイントは3つ、「応答速度」「応答の正確性」「直進性の高さ」です。これに加えて人体構造にも着目してクルマの開発をしています。ここで得られる成果は、誰もが感じられるレベルを目指しており、将来の自動運転においてもクルマの基本性能として大切なものです。
安心で愉しい走りを知能化技術で磨いていきます。

車両応答の
速さと正確性

「応答の速さ」は運転のしやすさに大きく関係しており、SUBARUはこれにこだわってきました。「応答の速さ」にはステアリングやサスペンション、車体、タイヤなど、構成部品の全てが関わっています。例えば、ドライバーがステアリングを操作してから実際にクルマの挙動が変化するまでに0.45秒の応答遅れが生じているとすると、その65%はハードウェアに起因しています。これらの全箇所を徹底的に極めることでスバルグローバルプラットフォームは応答遅れを改善してきました。

さらに改善すべきことはあります。そのポイントは3つあり、「ステアリングシステムのさらなる摩擦低減」、エンジンやサスペンションを取り付けている「ボルト締結部の合理的な構造設計を可能とする非線形解析技術」、「車体全体のヒステリシス」を分析することです。これにより、レーンチェンジした時のクルマの挙動の収束時間が10%、振れ幅が50%改善され、運転しやすく、安心感のある車両挙動が実現できます。

応答速度とともに必要になるのが「応答の正確性」です。ドライバーの入力に対して常に同じ応答をすることが求められますが、ここにブレがあるとドライバーの意図に反することになり、ドライバーは走行しにくいと感じます。これを改善するため、サスペンションや車体精度をさらに見直し、高精度化することでさらに運転しやすいクルマを目指します。これは、クルマの乗り味の向上にもつながり、上質な乗り味をさらに高めていくことができます。

外乱に対する
直進性の高さ

次に「直進性」です。実は、クルマをまっすぐに走せることは難しいことなのです。まっすぐ走る車であればドライバーの疲労が軽減できます。しかし、実際の道路では、路面の起伏や、前や横を走るトラックなど周りの車両が引き起こす不規則な風、加えてクルマ自身が起こす風の乱れの影響で、クルマは直進性を乱されます。そのため、このような影響を計測、分析する技術が必要になります。直進性を改善するには、風洞ではなく、路面の影響も再現できる計測が必要だと考えており、英国のCatesby Aero Research Facility (CARF)と協力して、直線2.74kmのトンネルを使って計測することを計画しています。

進化し続ける
AWD技術

AWDは長年SUBARUが得意とするものですが、さらに進化をしていきます。AWDと運動性能は非常に複雑な関係があります。例えば、直結AWDのトルク配分は前後50:50と言われていますが、コーナリングでは前後のタイヤの回転数が異なるためコーナリングの姿勢によってトルク配分は変化します。SUBARU車の運転に慣れた方は、SUBARUのAWDの特性をうまく利用して安全にスムーズに旋回していることが分かりました。誰もがこのような運転をすることができれば、もっと安心で愉しい走りができる。これを実現するための制御技術を開発しています。

人体構造に着目して
動的質感を磨く

スバルグローバルプラットフォームの取り組みのきっかけは、クルマの測定データと乗っている人のフィーリングが一致していないところにありました。測定の精度や測定ポイントを見直すことで、データとフィーリングを一致させる測定手法を開発し、それを具現化したのがスバルグローバルプラットフォームです。今後はさらに人体構造まで踏み込んだ研究を進めます。すでに最近のSUBARU車には、この成果の一部を織り込んでいますが、今後も研究を重ねその成果を将来のクルマに反映していきます。 SUBARUは、スバルグローバルプラットフォームをさらに進化させることで、ドライバーが運転するときの安心感・クルマを操る愉しさを向上させていきたいと考えており、同時に自動運転の時代にもポイントとなるため、重要なコア技術としてさらに磨きをかけていきます。

人の命を守る
安全技術

なぜSUBARUは死亡率が低いのか。その理由はSUBARUが総合安全(オールアラウンドセーフティー)思想という考えに基づいて長年クルマを開発してきた成果であると考えています。SUBARU独自の総合安全思想は 「0次安全」「走行安全」「予防安全」「衝突安全」の4つです。「0次安全」とは視界の良さや疲れないパッケージ、「走行安全」は障害物を正確に回避したり、回避した後のコントロール性です。「予防安全」はアイサイトのプリクラッシュブレーキなどにより、事故の防止や被害の軽減を図ることです。そこまでしても事故が起こってしまう場合に「衝突安全」で乗員を保護します。 第三者評価の対象は主に「衝突安全」で、最近は「予防安全」も評価の対象となっていますが、SUBARUは4つの安全思想で考えており、その結果がリアルワールドでの低い事故死亡率につながっていると考えています。 今後は、この4つの注力分野を更に強化すると共に、「つながる安全」を加え、「知能化技術」を活用することによって、2030年死亡事故ゼロ達成を目指していきます。

SUBARUの
死亡交通事故分析

このグラフはSUBARU車がかかわった、2017年の米国の死亡事故と日本の死亡・重傷事故の原因を分析した結果です。青い部分は自分のクルマに起因する事故、赤い部分は相手のクルマに起因する事故を示しています。日米ともに、事故の6割から7割が自車に起因するものでした。

死亡交通事故ゼロ
に向けたシナリオ

2030年死亡交通事故ゼロに向けては、まず、先進運転支援システム(ADAS)の高度化によって死亡交通事故全体の65%削減を目指します。そして残る35%については、SUBARUの得意とする衝突安全の継続的な強化によって乗員の傷害を軽減し、さらにコネクトサービスを活用した先進事故自動通報(AACN)によって救命率を向上。これらを組み合わせることで、2030年に死亡交通事故ゼロの達成を目指すというシナリオです。

ADAS(先進運転支援システム)の高度化

事故低減効果の高い先進運転支援システム(ADAS)は、SUBARU独自技術のアイサイトを新世代化していきます。一般道での事故への対応を拡大するなど、今後も引き続き進化させ、事故回避、運転支援技術を徹底的に磨き続けていきます。

アイサイトの
事故回避機能の進化

アイサイトは従来、直線での衝突回避をメインとしてきましたが、交差点や市街地での事故(歩行者の巻き込み、右折時に直進してくる対向車との衝突、出会い頭の衝突など)への対応を強化します。 さらにドライバーの状態を見守り、操作ミスへの対応を強化していきます。白線がない道でも道路の端を認識して逸脱させないような制御をしたり、ドライバーが意識を喪失したときに安全にクルマを停止させるなどの機能を投入していきます。

運転支援機能の進化

新世代アイサイトでは、ステレオカメラに高精度地図ロケーター、前後4つのレーダーなどを組み合わせることで、車線変更支援、カーブ予測自動減速、渋滞時ハンズオフ支援など、自動運転レベル2の運転支援技術を磨き上げていきます。高速道路をより快適・安全に移動できる最新機能を、量販価格帯のクルマで実現させていきたいと考えています。

アイサイト:
ステレオカメラへのこだわり

一般的に、運転支援システム(ADAS)というとレーダーと単眼カメラを組み合わせたものが多いですが、 SUBARUのアイサイトではステレオカメラと独自の認識アルゴリズムを用いています。カメラに映る全てをありのまま、高精度に立体化することで、あらゆるものの形を捉え、距離・速度を測り、位置を特定しています。

アイサイトは、二つのカメラの視差で距離を測定する仕組みによって、例えば10m先のクルマを、約4,000個の距離データ点群として認識しています。この仕組みにより、よりきめ細かい制御が実現できるのです。 また、道路形状の把握や、動いている物体位置の把握や動作予測にも優れた特徴を持っており、「認識、判断に必要な情報がステレオカメラだけで効率よく収集できる」というメリットがあります。

ステレオカメラと
AIの融合

アイサイトの特長であるステレオカメラの認識能力に、AIの判断能力を加えることで、さらなる進化を図ります。
例えば、カメラで白線を認識しつつ、センターラインや路肩が全く見えない雪道においても、画像から走行可能エリアをAIで算出し、走行経路を導き出すなど、走行可能領域の検出能力を向上。
また、前方車両が急ブレーキをかけて止まりきれないと判断したときには、最適回避ルートを見つけクルマをコントロール。
このようなアイサイトのポテンシャルを活かす研究開発を行うことで、認識・判断の能力を高め、あらゆる道路での安全性を高めていきます。

クルマとの
コミュニケーション

SUBARUは2018年に発売したフォレスターから、ドライバーモニタリングシステム(DMS)を採用しています。個人を認識するだけでなく、運転者のよそ見や眠気を検出し注意喚起する技術ですが、今後は、DMSとアイサイトを含めた様々な制御を連携させていきます。 また、SUBARUでは2019年に北米市場に、新たなインフォテイメントシステムを投入しました。クルマからの情報量が増え、コネクトなどのインプットも増えていき、さらに操作項目も増えて行くため、乗員とクルマのコミュニケーションがこれまで以上に大切になってきます。新たなシステムでは、メーターなどの重要機器とオーディオやナビゲーションなどのインフォテイメントを、セキュリティーと信頼性を担保しつつ、一つのユニットで駆動させる仕組みを量販車としては世界に先駆けて採用しており、これを今後はグローバルに展開していく予定です。

クルマとつながる価値

SUBARUは2016年から米国でコネクトサービスSTARLINKを提供しています。

SUBARUが提供する
「つながる愉しさ」とは

これは、2019年11月時点の米国でのStarlinkのサービス加入状況です。最初の3年の無償期間では96%、有償サービスでは平均48%と、新車を購入されたお客様の多くが加入されています。このサービスをカナダ、それから日本にも展開していきたいと考えています。

先進事故自動通報(AACN)の採用

このコネクトサービスの一環として、先進事故自動通報(AACN)を日本市場向けに展開します。これは、事故発生時に自動的に取得したさまざまな情報をコールセンターに通報し、救急車の出動が必要かどうかを死亡重症確率推定アルゴリズムで判断、必要であれば出動要請が出る仕組みです。救命開始時間が10分早まれば死亡率が7割減るとの研究結果もあり、2030年死亡事故ゼロを実現するための重要な仕組みであると考えています。

AACN進化の
ロードマップ

このAACNの機能をさらに拡充して行きたいと考えています。例えば、事故にあった車の乗員数や、さらにアイサイトと連携して歩行者事故の連絡、運転者の急病をドライバーモニタリングシステム(DMS)で判定して通報するなど、今後はAACNの情報精度の向上により、事故時の救命率の引き上げに取り組んでいきます。

衝突安全の
継続的な強化

死亡交通事故ゼロの実現に向けたもう一つのポイントは、衝突安全性能の向上によって被害を軽減することです。 SUBARUは2016年に発売したインプレッサで日本車初の歩行者保護エアバッグを採用しましたが、自転車との死亡交通事故も増えてきています。現在の歩行者保護エアバッグでは自転車に乗る人の頭を守ることは難しいため、自転車の方との衝突を想定したエアバッグの研究を進めています。 また、乗員の保護に関しては、従来、乗員の傷害値は成人男性をベースに考えてきましたが、実際の死亡者の事例を見ると、骨の弱い高齢者も多数おり、いかにして助けるかと考えた場合、エアバッグを膨らませるタイミングや、シートベルトの拘束力制御が鍵となります。アイサイトとの連携によってエアバッグを早めに開く、かつドライバーモニタリングシステムにより乗員の年齢などを考慮して拘束力を弱め、骨が折れないようにするなどの研究を行っていきたいと考えています。

このように、「ADASの進化」「AACNの活用」「衝突安全」の3つを継続的に強化することで、2030年死亡交通事故ゼロの実現を目指します。