──SUBARUらしさを突き詰めると浮き彫りになる「走る愉しさ」
クルマを買うときって、昔は何度も販売店に足を運んだと思うんですけど、購入時の販売店への平均来店数が2000年には7.5回、2015年には1.5回というデータがあるんです。一方で、クルマの使用年数は長くなっている。つまり販売店でもお客様との接点ってすごく減っているんですね。でもCASEによってお客様がクルマで常に接続できる世界になると、アフターセールス領域でも接点をもっていける。そこを狙ってSUBAROADはお客様とつながろう、と考えていきました。
SUBARUオーナーさんの声のなかに「わざとナビから外れて走ったりする」「もっと運転したいから遠回りしてる」「ドライブ自体が楽しい」という声があって、そこなんじゃないかと。調べてみると「エンゲージメントの高いお客様は走行距離が長い」というデータも出てきて、やはりSUBARUは「走る愉しさ」でお客様にコネクトしていこうと、SUBAROADの構想が形になっていったというわけです。

僕は入社と同時にSUBAROADにアサインされました。2020年なので、立ち上がってから1年くらいだったわけですが、そのときにはもうアプリはある程度の形になっていました。
ちょうどコロナの時期だったから、藤原さんともしばらくは画面越しでしか会えなかったんだよね。プロジェクトとしては、アルファ版・ベータ版という2つのプロトタイプを試作して、いろんなアイデアを検証していた頃です。
はい。スタートとゴールが決まっていて、走行中に音声ARを提供するというベータ版が出来上がっていました。初めてSUBAROADの案内で走ったときは、走る愉しさと旅行気分のようなワクワクがあり、すごく新鮮だったことを覚えています。
そこまで行き着くのに結構大変で、「こういう体験を盛り込みたい!」って描くことはできても、その体験を設計して、さらにそれをシステムに落とし込むのがすごく難しかったんです。試行錯誤を繰り返していましたね。カーナビで高速道路優先とかが選べるように、SUBAROADらしく「走りがいの強度」を設定できるパラメーターにも挑戦していたんですが、技術的な難しさもあって実装には至らず。SUBAROADが全然違う道を案内しちゃって、目の前にある渋谷の高速ランプに全然入れなくて、ぐるぐるこの辺りを走り回っていたこともありました(苦笑)。
それでも結果的に体験を形にしていけたのは、エンジニア(開発)と企画屋さん(体験/デザイン)がセットになってアジャイル開発できたからです。SUBAROADみたいに体験を価値にしていこうとするとき、開発と体験デザインってセットじゃないと難しいと思います。例えば、原理モデルみたいなものを作っていくときって、それこそコードを書きながら体験をデザインするし、体験設計側はエンジニアリングをします。何度も行ったり来たりしないと実現していけないんです。もちろんクルマも走らせますし。開発と体験・検証の近さは、今のSUBARU Labにも共通することだと思います。
