Member Interview AIモデルが“動き”になるIn the Wildな開発 前編:AIエンジニアもハンドルを握り検証する「In the Wild」なアジャイル開発のリアル談 実験室のような整備された環境ではなく、実環境で問題を解くことを、AIの世界では「In the Wild」という。SUBARUでは、エンジニアのアイデアがモデルになり、動きとなる。AIエンジニアが語る、難題を解く面白さと、挑む意義とは。 大川 洋平 MLエンジニア。大手印刷会社、制御機器メーカーを経て、2022年よりSUBARU。深層学習におけるエンジニアスペシャリストとして、次世代アイサイトのAIモデルを開発。技術本部 ADAS開発部 AI R&D課 ML4リーダー。 SUBARU Lab メニュー SUBARU Lab トップ 開発ストーリー ADASを進化させる次世代「アイサイト」 コネクト時代の幕開けを告げた「SUBAROAD」 閉じる 社員インタビュー AIモデルが“動き”になるIn the Wildな開発 閉じる 企業情報 採用情報 閉じる 募集要項一覧をみる AIエンジニアとして8年次のSUBARUのADASに向け、新たな難題を解き始める ──SUBARU Lab のAIエンジニアになるまでの道のりは? 2006年から2017年まで、大手印刷会社でエンジニアとして半導体の仕事に関わり、ナノメートル単位の微細加工技術のシミュレーターを作っていました。化学反応や物理モデルをベースに開発していたのですが、物理モデルベースのシミュレーションに限界を感じ、AIを使い始めたのがAIエンジニアとしての始まりです。 その後、制御機器メーカーへ転職し、工場で使われる外観検査のAIモデルを作ったり、ロボットアームを制御するAIモデルの研究をしていました。本格的にAIを使って仕事をしたのはこの時代からです。 ルールベースのアルゴリズムに比べて、AIモデルは結果として精度が出やすいためエンジニアとしての手応えがあります。また、ルールベースの開発では、数多くのアルゴリズムの組み合わせを作らなければならないことがあり、エンジニアが一つひとつ書くとなるとなかなか大変です。 AIでは大量の学習データから傾向を学習できるので、エンジニアはそれ以外のことにリソースを割くことができます。アイデアを練る時間ができるので自由な発想が生まれ、新しいアイデアを再びAIモデルに結びつけていける。そんなAIエンジニアの醍醐味を、スピーディに、しかもクルマに実装してテストしながらアジャイルに開発できるのが、SUBARU Labです。 ──現在はどんな開発をしていますか? 私がSUBARUに入社したのは2022年。SUBARU Labが設立された2年後です。現在はML(Machine Learning)チームに所属し、主に次世代「アイサイト」のAIモデルを開発しています。アイサイトとは、SUBARUが独自で開発した運転支援システムで、SUBARUを象徴する安全技術のひとつです。 入社して3年間はCV(Computer Vision)チームという、AIモデルを活用するチームに所属していました。じつはCVチームでもAIモデルを開発するものだと勘違いして入ったのですが、今となってはその経験が非常によかったと思っています。CVチームではAIモデルの出力を活用した画像認識アルゴリズムを新規で開発しています。そのためアイサイトのアーキテクチャやアイサイトにおけるAIの活用方法を知ることができ、現在のAIモデル開発にも活きています。 AIモデルを作るMLチームへ移籍したのは2025年で、リーダーとして複数あるチームのひとつを任されています。目下取り組んでいる次世代アイサイトの他、我々のチームは、将来的なアップデートをどうするかを考える役割も担っています。 将来的なアップデートについては、ちょっと面白いことをやろうと考えているところです。まさに構想を練り始めた段階ですが、これから我々が新たな、そして難しい問題を解こうとしていることは間違いありません。そういったことを考えるのが好きなAIエンジニアの方がいれば、ぜひSUBARU Labに来てほしいです。一緒に仕事ができたら嬉しいですね。 エンジニアが計画・設計・実装・テストまでやるSUBARU Labのアジャイル開発 ──SUBARU Labのリアル風景は? AIの分野には「In the Wild」という言葉があります。制約を与えて問題を解きやすくした実験室環境ではなく、実社会・実環境で問題を解く、という意味なのですが、SUBARU Labで行っていることは、まさにこの「in the Wild」。実際に車を走らせながらAIモデルの開発が進められています。しかも、我々エンジニア自身が、開発したモデルを搭載した試験車を走らせてテストも行います。 具体的にどのように開発しているかというと、例えば、作成したAIモデルを搭載して実際に車を走らせてみる。物体が徐々に近づいてきた時、うまく検出できなかった遠方の物体が検出できるようになったりすることがあります。 ステレオカメラの認識結果とAIモデルの認識結果を束ねるアルゴリズムを開発しているCVチームからするとAIモデルによる不安定な検出よりも、安定した検出のほうが扱いやすいため、「もっと検出を安定させてほしい」といった要望がCVチームから戻ってきます。我々は、学習データをどう変え、どういう学習方法を取れば検出が安定するかなど、チームメンバーでアイデアを持ち寄り、自分たちで目標や設定を決めて、新たなAIモデルを作り直します。そして再びCVチームに渡し、車に実装して走らせたり、コンピュータ上のシミュレーションで回したりして検証を行います。そうしたアジャイルスタイルで要望を一つずつクリアしていくのが、我々の仕事の一例です。ひとつ片付いたら「次はあっちのチームの要望を片付けにいこう」という感じですね。 AIモデル開発には、データを固定してモデルを改善する「モデルセントリック」と、モデルを固定してデータを改善する「データセントリック」という2つのアプローチがあります。我々はモデルの改善をおこないながら、学習データの多様性や質を高めるといったデータセントリックなアプローチも採用しています。それもエンジニア自身が運転して撮影したデータの中からです。これもSUBARU LabにおけるAIモデル開発の醍醐味のひとつと言えるでしょう。 Next Chapter 2/2 AIモデルが“動き”になるIn the Wildな開発 後編:AIエンジニアもハンドルを握り検証する「In the Wild」なアジャイル開発のリアル談 続きを読む