SUBARU Lab Development Story 1 AI実装で進化させる次世代「アイサイト」 第3話 次世代アイサイトを支える
「SUBARUのAI」

目指すは、2030年死亡交通事故ゼロ*

SUBARU車乗車中の死亡事故およびSUBARU車との衝突による歩行者・自転車等の死亡事故ゼロを目指す。

アイサイト

アイサイトとは、SUBARUが開発した独自の運転支援システム。衝突回避支援機能や、運転支援機能などにより、安全性の向上と運転負荷軽減でドライバーをサポートする。

SUBARU LABメンバーの金井 崇、荒木 健太、税所 真弓が並んでいる

次世代「アイサイト」への搭載を目指すAIモデルの開発は、SUBARU Labの非常に大きなミッションである。人間の目のように2つのカメラ(ステレオカメラ)で周囲の状況を捉える画像認識技術で、ADAS(Advanced Driver-Assistance System)開発に挑むメーカーは世界でも珍しい。1989年に始まったSUBARUの画像認識の研究開発は、1999年から提供を始めたADA、そして2008年に運転支援システム「アイサイト」として結実し、進化を重ねてきた。今、自動車業界全体が大きな転換点を迎えており、ADAS技術も例外ではない。SUBARUが描くAI実装の姿とは──次世代アイサイトの輪郭に触れる、開発ストーリー。

  • 金井 崇

    ITインフラエンジニアとしてクラウド事業者に約15年勤務した後、2021年よりSUBARUに入社。SUBARU LabでのAI開発や次世代新技術の開発全般をマネジメント。SUBARU Lab副所長。

    金井 崇
  • 荒木 健太

    AIエンジニアとしてWeb業界やSIerなどで勤務した後、2023年よりSUBARUに入社。SUBARU LabにてADAS領域のAI開発を担うML(Machine Learning)チームのリーダー。

    荒木 健太
  • 税所 真弓

    2021年、新卒でSUBARUに入社。群馬製作所でセンサーの開発に従事した後、2024年よりSUBARU Labへ。AIエンジニアとして、AI経路認識チームにてレーンキープのAIモデル開発を担当。

    税所 真弓

「一般道はバラエティに富んでいる」

──次世代アイサイトはどこまでいくのか

金井

SUBARUは「2030年死亡交通事故ゼロ*」という目標を掲げています。次世代アイサイトでは、この大きな目標を実現するために、前述の通りAIでステレオカメラの認識性能を高め、運転支援機能の強化に取り組んでいます。次世代アイサイトのために開発中の画像認識AI「SUBARU ASURA Net」は、これまで認識が困難だった状況でも的確に物体認識できるようになることをめざしています。

また、現行のアイサイトXでは、カーブ前の速度抑制機能、渋滞時ハンズオフアシスト、自動路線変更機能など、『レベル2+』相当の運転支援技術を備えています。次世代アイサイトでの展開は未知数ですが、高速道路だけでなく一般道でのレーンキープ機能動作を意識した経路認識をテストするなど、研究開発は進んでいます。

SUBARU車乗車中の死亡事故およびSUBARU車との衝突による歩行者・自転車等の死亡事故ゼロを目指す。

アイサイトのイメージ画像
税所

一般道は、高速道路のようにシンプルではありません。側溝のふち、縁石、ガードレールなどの認識も難しく、レーンキープも一筋縄ではいきません。大量のデータを集めての学習とアノテーションが必要になります。

金井

一般道は状況がバラエティに富んでいるため、状況一つひとつに応じて『こういう場合はこう動け』と人間が設計するには限界があります。AIによるさらなるアプローチや、それ以外のアイデアも交えて、実現可能性を探っているところです。

そうした取り組みの中で、SUBARU Labが立ち上がってからの約5年の間に、実はAI経路認識モデルや正解付けの方法もスクラッチ(内製)で2〜3回ガラッと変えています。簡単にいえば、やり直しのようなことです。AI開発って「何を教えるか」それを「どう教えるか」が大事なわけですが、「どう教えたらうまく使えるモデルになるのか」は人間が考えなければいけない部分で、その設計がとても難しいわけです。一度ルールを定めて動き出すと、普通はそう簡単には変えません。時間も人手も大きくかかるからです。しかし私たちは、開発を進める中で何回か正解の定義方法の全面的な見直しを行いました。その後は安定してきたため大きな変更は減りましたが、「必要だと感じたときにはやる」という姿勢は今も変わりません。

「新しくきたAIエンジニアがすぐに開発を始められるように」

──SUBARU Labのエンジニアリング環境とは

荒木

AI開発においては、クラウドや計算リソースなどの開発環境が非常に重要です。僕が入社したときにはすでに、そのあたりの必要な環境が整えられていて、エンジニア目線で開発に集中できる環境がきちんと用意されていたのが印象的でした。

金井

あれは2021年から2022年に整えました。前職ではクラウドエンジニアを担当していたので、その分野は僕の専門でもありました。これからSUBARU Labが大きくなっていくことはわかっていたので、新しいAIエンジニアが入社した時、準備や環境づくりにできるだけ時間をかけず、スムーズに開発を始められる仕組みを準備しておきたいと思ったんです。なるべく自動的にAI学習を実行できるようにしておきました。

荒木と金井が働いている様子
荒木

クラウドベースとオンプレミス(自社システム)の活用もしっかり考えられていたことにも、驚きました。

金井

それは今もコストパフォーマンスを見て使い分けています。開発リソースへの投資については、常に慎重に考えています。効率を考えながら、必要なものを準備する。もちろん、投資する価値があるものには、しっかり投資します。ただ近年はAI開発も投資競争のようになっている側面もあるので、冷静かつ迅速な判断が求められる状況になっています。

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三者三様の道のり
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手前の荒木と奥にいる税所が会話している様子

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