──次世代アイサイトはどこまでいくのか
SUBARUは「2030年死亡交通事故ゼロ*」という目標を掲げています。次世代アイサイトでは、この大きな目標を実現するために、前述の通りAIでステレオカメラの認識性能を高め、運転支援機能の強化に取り組んでいます。次世代アイサイトのために開発中の画像認識AI「SUBARU ASURA Net」は、これまで認識が困難だった状況でも的確に物体認識できるようになることをめざしています。
また、現行のアイサイトXでは、カーブ前の速度抑制機能、渋滞時ハンズオフアシスト、自動路線変更機能など、『レベル2+』相当の運転支援技術を備えています。次世代アイサイトでの展開は未知数ですが、高速道路だけでなく一般道でのレーンキープ機能動作を意識した経路認識をテストするなど、研究開発は進んでいます。
SUBARU車乗車中の死亡事故およびSUBARU車との衝突による歩行者・自転車等の死亡事故ゼロを目指す。

一般道は、高速道路のようにシンプルではありません。側溝のふち、縁石、ガードレールなどの認識も難しく、レーンキープも一筋縄ではいきません。大量のデータを集めての学習とアノテーションが必要になります。
一般道は状況がバラエティに富んでいるため、状況一つひとつに応じて『こういう場合はこう動け』と人間が設計するには限界があります。AIによるさらなるアプローチや、それ以外のアイデアも交えて、実現可能性を探っているところです。
そうした取り組みの中で、SUBARU Labが立ち上がってからの約5年の間に、実はAI経路認識モデルや正解付けの方法もスクラッチ(内製)で2〜3回ガラッと変えています。簡単にいえば、やり直しのようなことです。AI開発って「何を教えるか」それを「どう教えるか」が大事なわけですが、「どう教えたらうまく使えるモデルになるのか」は人間が考えなければいけない部分で、その設計がとても難しいわけです。一度ルールを定めて動き出すと、普通はそう簡単には変えません。時間も人手も大きくかかるからです。しかし私たちは、開発を進める中で何回か正解の定義方法の全面的な見直しを行いました。その後は安定してきたため大きな変更は減りましたが、「必要だと感じたときにはやる」という姿勢は今も変わりません。