SUBARU Lab Development Story 1 AI実装で進化させる次世代「アイサイト」 第1話 リアルワールドが生み出すAI搭載の次世代「アイサイト」 AIエンジニア自身による実環境(リアルワールド)でのAIの挙動確認 アイサイト アイサイトとは、SUBARUが開発した独自の運転支援システム。衝突回避支援機能や、運転支援機能などにより、安全性の向上と運転負荷軽減でドライバーをサポートする。 SUBARU Lab メニュー SUBARU Lab トップ 開発ストーリー ADASを進化させる次世代「アイサイト」 コネクト時代の幕開けを告げた「SUBAROAD」 閉じる 社員インタビュー AIモデルが“動き”になるIn the Wildな開発 閉じる 企業情報 採用情報 閉じる 募集要項一覧をみる 次世代「アイサイト」への搭載を目指すAIモデルの開発は、SUBARU Labの非常に大きなミッションである。人間の目のように2つのカメラ(ステレオカメラ)で周囲の状況を捉える画像認識技術で、ADAS(Advanced Driver-Assistance System)開発に挑むメーカーは世界でも珍しい。1989年に始まったSUBARUの画像認識の研究開発は、1999年から提供を始めたADA、そして2008年に運転支援システム「アイサイト」として結実し、進化を重ねてきた。今、自動車業界全体が大きな転換点を迎えており、ADAS技術も例外ではない。SUBARUが描くAI実装の姿とは──次世代アイサイトの輪郭に触れる、開発ストーリー。 金井 崇 ITインフラエンジニアとしてクラウド事業者に約15年勤務した後、2021年よりSUBARUに入社。SUBARU LabでのAI開発や次世代新技術の開発全般をマネジメント。SUBARU Lab副所長。 荒木 健太 AIエンジニアとしてWeb業界やSIerなどで勤務した後、2023年よりSUBARUに入社。SUBARU LabにてADAS領域のAI開発を担うML(Machine Learning)チームのリーダー。 税所 真弓 2021年、新卒でSUBARUに入社。群馬製作所でセンサーの開発に従事した後、2024年よりSUBARU Labへ。AIエンジニアとして、AI経路認識チームにてレーンキープのAIモデル開発を担当。 「マルチタスクな運転をAIに実装するということ」 ──ルールベースだけでは実現できない、AIを活用した新たな物体認識とは 荒木 目下、SUBARU Labで進められているのが、次世代アイサイトに搭載するためのAIモデルの開発です。多くのメーカーが車両周辺の物体の検出や距離の測定などにレーダーやLiDARとカメラを組み合わせて利用するなか、SUBARUはステレオカメラを採用しているのが特徴です。画像の情報に加えて左右のカメラの画像の違いから三角測量の原理を用いて画像内の各点の距離を同時に測ることができます。 現行のアイサイトでは画像と距離の情報などから物体を認識する特徴量を開発者が手動で設計していますが、次世代アイサイトへの搭載を目指して開発しているのは、車両なのか歩行者なのかといった物体認識の特徴量をディープラーニング技術で学習データから自動的に設計するAIモデルです。 これまでアイサイトが数十年にわたって積み上げてきたステレオカメラによるルールベースのアルゴリズムに加え、AIモデルを組み合わせて使うことで認識性能をさらに高められると考えています。 金井 運転はマルチタスクです。人間は運転する時、同時に、しかも瞬時に人も見るし、道路も見るし、信号機も道路標識も見ている。ありとあらゆる種類のものを同時に認識して、「ここは避けなきゃいけない」「ここを進もう」と考えながら運転しています。 それをAIなどのシステムに実装しようとすると、前の車両を認識するタスク、歩行者を認識するタスク、道路標識を…とそれぞれに開発や動作の品質を保証するための多くの検証が必要になります。ステレオカメラ認識技術とAI技術による結果をひとつにまとめ、結果を束ねて使えるように仕立てるチームが必要になります。 荒木 SUBARU LabではCV(Computer Vision)チームがステレオカメラの認識結果とAIの認識結果を束ねるアルゴリズムを考え、車両の制御に使えるように仕立てる役割を担ってくれています。CVチームと我々MLチームは密に連携を取っていて、MLチームが開発しているAIモデルを活用したアプリケーションの開発をCVチームが行っています。 「人間はどこを見て、何を境界と認識して、自分の走りをしているのか」 ――次世代でも不変な「リアルワールド重視」「安心と愉しさ」 税所 私はAI経路認識チームに所属しており、アクティブレーンキープ機能などへの活用を目指すAIモデル開発に携わっています。私たちのチームでは走行画像を収集し、必要なデータを選別してAIに学習、作成したAIが出力する経路情報をもとに車両を制御し、クルマの挙動を評価するという一連の流れを繰り返します。AIの性能向上のために日本に限らず世界中どこへでも行きます。課題を見つけてはAIに学習させる正解データの内容、AIモデル自体の設計、学習データの追加や更新など、さまざまなアプローチで課題を解決していきます。 道路の中でクルマが通るべき場所はどこか。多くの場合は白線がガイドになるのですが、世界にはさまざまな道があり、白線があるとも限りません。縁石を頼りに走る道もありますし、どこまでが道なのか不明瞭な道もあります。世界各地域には、日本では珍しい道路形状や目印などが多く存在しているため、特定の地域のデータだけでAI開発をしていても、他の地域でそのまま利用できるとは限りません。 人間はどこを見て、何を境界と認識してクルマを走らせているのか。AIモデルを作る際には、その点が重要になります。学習させるためには「こういう道の場合はここを境界として走ります」というルールを、私たちが決めなければいけません。最近は、日本とアメリカなど国や文化の違いによって道路のどの辺りを走るのかがずいぶん違うこともわかりました。そんな中で何を正解とするかを考えていかなければなりません。アイサイトのAIエンジニアとはクルマを運転する人の気持ちや特性を考えて開発するという仕事です。 プライベートな旅でも、珍しい道に出合うとすかさずスマホで録画しています。知らないことはAIに学習させられないため、新しい走行シーンに出合えると嬉しくなります。もちろん世界中の道路パターンを網羅することは不可能ですが、カタログやインターネットの情報などのいわゆる机上だけでやっていてはダメで、走りに行くことが大事。自分たちで課題を見つけていくことが、とても大切だと思っています。 金井 アイサイトの開発コンセプトとして「リアルワールド重視」という言葉をよく使います。AIがすごい可能性を秘めていることは確かで、そこは追い求めていかなければなりませんが、リアルワールドで本当に使って大丈夫なのか?という視点と考察は忘れないようにしています。『これができます』『あれができます』と、カタログを飾るような新しい機能を増やせばよいとは考えていません。実環境で安心感をもって使えるよう一つひとつの機能を丁寧に作り込む。そうしたリアルワールドでしっかり力を発揮するAI技術の開発を重ねています。 「安心と愉しさを提供します」と掲げているSUBARU。その安心はリアルなものでなくてはいけません。だからこそ、AIエンジニアである我々自身がクルマに乗り、確認しながら開発をしています。安心して使えるAIにこそ意味があるのです。 Next Chapter 2/4 ADASを進化させる次世代「アイサイト」 第2話 高い内製力が可能にするスピーディなアジャイル開発 続きを読む 開発ストーリー SUBARU Lab Development Story 2 コネクト時代の幕開けを告げた「SUBAROAD」 SUBAROADチーム データエンジニアが開発した最短ルートを案内しない「SUBAROAD」 SUBARUはなぜ、遠回りをするドライブナビアプリを開発したのか? 「SUBAROAD」誕生に不可欠だったエンジニア×体験のアジャイル開発 オープンイノベーションによる多彩なプロフェッショナル達との協業 「SUBAROAD」を携え挑むコネクティッドカーエクスペリエンス 北米を舞台に始まろうとしている新しいコネクティッド体験とは? 「体験」を認識・設計するコネクト時代のエンジニアとは? SUBARUのエンジニアリングは何のためにあるかを問う