──エンジニアによる「体験」の再認識
「お客様はドリルを買っているのではなく、ドリルを使って開ける穴を買っているんだ」という「ドリルの穴理論」というものがありますが、まさにその通りで、ユーザーは体験を買っています。そのことを、僕たちは商品としてもう一度捉え直さなければいけません。SUBARUはあくまで車屋さんだったので、長らく”クルマを作って売って終わり”というビジネスモデルの中にいました。そんな中でも、SUBARUならではの体験という価値を見出していたお客様がいて、SUBARUというブランドが選ばれ続け、今も年間100万台ぐらいが売れていく。その強みを、これから認識し、伸ばしていかなければいけないんです。
それがたとえお客様にとっては同じ体験であったとしても、僕らがお客様に体験として意図的にどう提供するか、その体験は僕らからすると製品・商品であるわけです。きちんと体験として設計して、体験として提供する。その体験を提供する手段を実現するためのエンジニアリングであるということを、エンジニアは理解しておかなければいけない。これがデジタルというものが発生したことによって起こっている、今の流れです。
例えばSUBARUのクルマに乗っていてアイサイト(SUBARUが独自開発した運転支援システム)のおかげで助かった経験があるお客様と、そうでないお客様ではロイヤリティに大きな差があります。SUBAROADでも同様で、SUBAROADを使って楽しかったと言ってくださるお客様は、そうでないお客様と比べて、生涯でSUBARUを選んでいる台数が明らかに違います。いかに体験が重要であるかという話です。
それを実現するためのエンジニアリングが、これまで以上に重要になってきています。デジタル技術を使ったアイデアや企画を、技術として実装していくことを、ポンポン境界なくやってしまえるようなエンジニアがこれからは求められていきます。
