考え方

SUBARUは、気候変動への取り組みは最も重要な課題の一つとして認識しています。SUBARUは2050年のカーボンニュートラルを目指し、商品および工場・オフィスでのCO2の排出削減を通じて脱炭素社会の実現に貢献すべく、「長期目標」およびそのマイルストーンとして「中期目標」を策定し、目標達成に向けて取り組んでいます。

体制

SUBARUは、社会とSUBARUの持続的成長、および地球環境の保全に貢献することを目的とした「環境委員会」を設け、将来の社会が要求する環境水準と合致する大局的かつ中長期的な方策(目標など)を議論するとともに、それらの進捗を評価しています。
環境委員長は、取締役会が選任したサステナビリティ部門を担当する執行役員が務めます。環境委員会で行われた議論などの内容は、サステナビリティ委員会へ報告されます。また、必要に応じて、経営会議および取締役会へ付議・報告される体制を整備・運用しています。気候変動に関する課題についても当環境管理体制に組み込み、気候関連課題を含む環境リスク・機会の評価、モニタリングおよびマネジメントレビューを実施し、特に重要な案件については取締役会の審議を経て意思決定しています。生産環境小委員会、地球温暖化防止部会、国内関連企業環境小委員会、販売・サービス環境小委員会、物流環境小委員会を各々年2回実施し、各取り組みの進捗状況をモニタリングしています。
また、SUBARUは、事業活動のライフサイクル全体で排出されるCO2の削減を通じて脱炭素社会の実現に貢献するため、毎月、「製品使用」「素材部品」「輸送」「廃棄」「製造」の5つの領域の代表部署が集まるCN推進会議を開催しています。2050年のカーボンニュートラルを達成すべくCN推進会議では、各領域が協力して情報共有を行うとともに、中長期的な視点でのマスタープランの策定および各領域の排出量の推移の視える化と減らす化を行っています。SUBARUは、ライフサイクル全体でのCO2削減を目的とした組織横断的な会議体を運営しており、これらの取り組みは、環境委員会にて、カーボンニュートラルのための取り組みとして全体統括されています。

気候変動関連のガバナンス体制

認識した主なリスクと機会

SUBARUは、持続可能な事業活動を行うため、気候変動に関連するリスクと機会の認識を図っています。
現時点で認識している気候変動リスクとして、気候変動に対する取り組みが適切に進まない、あるいは異常気象による調達・生産・物流活動の停滞などが生じた場合、さらに現時点での将来予測が極めて困難な移行リスク・物理的リスクの影響および発現度により、研究開発費用などの増加、顧客満足やブランドイメージの低下による販売機会の逸失、異常気象による調達・生産・物流活動の停滞などにより、SUBARUグループの経営成績や財政状態に重要な影響を及ぼす可能性が考えられます。
また、気候変動に対する適切な取り組みにより、新たな市場の開拓や雇用の創出、資本やエネルギーの効率的な活用が期待されます。

認識した主なリスク

事業運営全般

【評判リスク】

①低炭素化・脱炭素化への取り組みが不十分な場合、SUBARUブランド価値が毀損し、人材採用や販売に悪影響を及ぼす可能性があります。また、中期・長期的な視野の投資家などからの資金調達が困難となり、資本コストが上昇する可能性があります。

【規制リスク】

②現在のパリ協定の各国目標は2°C未満の目標達成には不十分といわれており、各国がより厳格な目標へ見直した場合には、SUBARUのビジネスに重大な影響を与える可能性があります。

【急性的物理リスク】

③気候変動の顕在化にともなう各地での集中豪雨の多発による原材料供給の停滞や工場浸水による操業リスクが考えられます。

商品

【規制リスク】

①日本、米国、欧州、中国の燃費規制に合致しない場合、法令違反に基づく罰金・過料やクレジット購入など、負のインセンティブが生じ、SUBARUは追加の費用や損失を被る可能性があります。また、一定の燃費水準を満たさない場合には、商品の販売機会が制限される可能性があります。

【市場リスク】

②現時点では電動化に関する技術進歩・価格適正化の予測が難しく、将来、市場との乖離が生じることが予想されます。この市場ニーズとの乖離は過大な開発投資、顧客満足度の低下による不測の損失や販売機会の減退を招き、電動化の進行を遅らせる可能性があります。

③中長期的な視野では電動化は着実に進むものと考えており、ある段階で一気に市場への浸透が進む可能性があります。その時点で、適切な技術と商品を備えていない場合には、商品の販売機会に重要な影響を与える可能性があります。

【技術リスク】

④電動化は、調達・使用・廃棄にいたるすべての過程で、収益性を確保しつつ進めることが重要であり、SUBARU商品の上流・下流を巻き込んだ取り組みが進まない場合には、商品のライフサイクル全体でその目的を達成できない可能性があります。

【慢性的物理リスク】

⑤天然資源を使用しているタイヤ、電動化技術に使用する車載電池材料などの金属資源の調達が困難になる可能性があります。

生産段階

【規制リスク】

①化石燃料由来のエネルギーを使用し続けた場合、石油などの地政学的な要因によるもののほか、政府の炭素税や排出枠規制などの対象となり、コストが上昇する可能性があります。

【技術リスク】

②再生可能エネルギー利用が進まなかった場合、スコープ1、2排出量の削減対策が滞る可能性があります。

認識した主な機会

【市場機会】

①商品の環境対応が適切に進み、かつ、世界規模で気候変動の適応・緩和も進んだ場合、SUBARUの主力市場を維持しつつ、安心と愉しさに共感する市場の拡大が期待できる可能性があります。

②気候変動の緩和に貢献することで、SUBARUのブランド価値が上昇し、人材採用や販売に好影響を与える可能性があります。また、投資家からの資金調達が容易となり、資本コストの低減につながる可能性があります。

【エネルギー源に関する機会】

③生産段階で消費するエネルギーに関し、費用対効果にも配慮しつつ再生可能エネルギーへ移行することは、化石燃料由来のエネルギーに内在する価格変動リスクから解放され、将来のコスト上昇を未然に防げる可能性があります。

リスク・機会に関しては、過去の事実や現在入手可能な情報に基づいたものであり、将来の経済の動向、SUBARUを取り巻く事業環境などの要因により、大きく異なる可能性がある。また、気候変動に適応したSUBARUの商品が貢献できる機会を表したものであり、気候変動の悪化などを期待するものではない。

戦略

SUBARUは気候変動に関連して検討された様々なシナリオと、持続可能な事業活動に向けて認識されたリスクと機会を考慮し、対応策を検討しています。
対応策の例として、市場において電動車の販売比率が大きく高まるシナリオ、市場での電動車の浸透が緩やかに進むシナリオなど複数のシナリオを考慮し、電動化戦略を策定しています。
また、気候変動への対応が進まず自然災害の激甚化が進展するリスクを考慮し、気候変動への適応として豪雨時の浸水対策をBCPとして進めています。

BCP(Business Continuity Plan):事業継続計画
シナリオ別に認識しているリスクと対応策の具体例
シナリオ例 シナリオ下で特に重視しているリスクの例 対応策
BEV化の浸透 商品 一定の燃費基準を満たさないことへの商品の販売機会の制限リスク
  • 環境規制や市場の動向を注視したBEV、ハイブリッド車、ガソリン車の生産比率を柔軟に変更できる生産体制の構築
  • 2028年末までの8車種のBEVラインアップと米国で40万台の販売
市場ニーズと電動化技術の乖離による市場リスク
自然災害の激甚化 事業運営 各地での集中豪雨の多発による原材料供給の停滞や工場浸水による操業リスク 雨水貯留槽の設置や排水能力の強化による豪雨時の浸水対策

リスクマネジメント

自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えており、グローバルに事業を展開するSUBARUグループは世界情勢の変化に素早く対応して、経営の持続性を確保し経営基盤の強靱化を図りながら、人的、社会的および経済的損失の最小化にこれまで以上に取り組んでいく必要があります。こうした環境のなかで事業活動を行っていくうえで、グループワイドでの戦略的なリスクマネジメントの推進が不可欠であり、SUBARUグループをリスクに強い体質にし、企業価値の向上を図ることが重要であると考えます。
SUBARUは、気候変動に関連する「政策・規制」「技術」「市場」などの移行リスクに関して、各専門部門が広く情報を収集し、将来予測から不確定な気候変動リスクの認識に努めています。これらの移行リスクは、執行会議にて提案・議論され、特に重要な案件については取締役会の審議を経て意思決定しています。
また、気候変動の物理的なリスクに関わる浸水などの自然災害に伴う操業リスクに関しては、BCPの一環として、リスクマネジメント・コンプライアンス室が中心となり関連規程類の整備を進め、緊急時のSUBARUグループ全体にわたる情報を一元的に掌握するとともに、その対応を統括管理する体制を整えています。

Business Continuity Planの略で、事業継続計画のこと。

リスクマネジメント

中長期目標(長期ビジョンとマイルストーン)

SUBARUは脱炭素社会に貢献するため、商品(スコープ3)および工場・オフィスなど(スコープ1および2)に関する長期目標(長期ビジョン)を2050年とし、それを補完する中期目標(マイルストーン)を非連続かつ急速に変化する事業環境に応じて随時見直しながら設定しています。なお、2023年に、工場・オフィスなど(スコープ1および2)に関する中期目標を「2035年度に2016年度比60%削減」、商品(スコープ3)に関する中間目標を「2030年に全販売台数の50%をBEVにすることを目指す」に引き上げました。
SUBARUは各国の燃費規制などSUBARUに関連する政策との適合に向けて検討を行っています。これらの政策動向や国際エネルギー機関などが公表している各シナリオの情報をもとに独自のシナリオを作成し、中長期の目標および達成に向けた計画の策定を行っています。

カテゴリー 時期 目標
商品
(スコープ3)
2050年 Well-to-Wheelで新車平均(走行時)のCO2排出量を、2010年比で90%以上削減
2030年代前半 生産・販売するすべてのSUBARU車に電動技術を搭載
2030年 全世界販売台数の50%をBEVにすることを目指す
工場・オフィスなど
(スコープ1,2)
2050年度 カーボンニュートラルを目指す
2035年度 2016年度比60%削減(総量ベース)

実績

SUBARUグループの2022年度のサプライチェーン温室効果ガスの排出量(スコープ1、2、3)は31,121千t-CO2でした。スコープ3排出量の割合が98%であり、販売した商品の使用による排出量の割合が大半を占めています。SUBARUグループが直接排出するCO2(スコープ1および2)は、スコープ3も含めた全体から見るとわずかともいえます。しかし、SUBARU自らが率先して直接排出のCO2削減に取り組むことは、オールSUBARUとしてバリューチェーン全体の活動をより充実させていくことにつながるものと考えます。
2022年度は生産活動が通常に戻ったため、スコープ1、2排出量は20千t、エネルギー使用量は419TJ、前年度から増加しました。ただし、矢島工場での太陽光発電設備の導入などにより、再生可能エネルギーの導入比率6.1%と前年実績を維持しています。また、エネルギー効率が改善し、CO2排出量原単位では前年度比で24%改善しています。引き続き省エネルギー設備や再生可能エネルギーの導入などの削減施策により、2035年を達成年度とした新しい削減目標の達成に向け、CO2排出量、エネルギー使用量の削減に努めます。

  • スコープ1:企業の自社施設から直接排出される温室効果ガス
  • スコープ2:他社から供給された電気・熱・蒸気の使用にともない間接的に排出する温室効果ガス
  • スコープ3:スコープ1、2以外の間接排出で、原料調達、輸送、商品使用、廃棄過程のほか、従業員の通勤、出張などにより排出される温室効果ガス
CO2排出量(組織別)
CO2排出量(スコープ別)

対象範囲

SUBARU:
(株)SUBARU
国内グループ会社:
国内連結子会社52社(連結子会社である国内SUBARU販売会社33社含む)
海外グループ会社:
Subaru of Indiana Automotive, Inc.、Subaru of America, Inc.、 Subaru Canada, Inc.、Subaru Research & Development, Inc.

SUBARUは温対法に基づきCO2排出量を算定しています。ただし、海外グループ会社の電力の排出係数はIEA(国際エネルギー機関)が毎年公表している直近の国ごとの全電源CO2排出原単位を使用しています。
国内グループ会社のデータを連結子会社の集計範囲とし、スコープ1、2排出量の把握率は99%(従業員数の比率ベース)です。
なお、一部の国内グループ会社の電力使用量に誤りが生じたため、過年度実績を修正しています。

エネルギー使用量

対象範囲

SUBARU:
(株)SUBARU
国内グループ会社:
国内連結子会社52社(連結子会社である国内SUBARU販売会社33社含む)
海外グループ会社:
Subaru of Indiana Automotive, Inc.、Subaru of America, Inc.、 Subaru Canada, Inc.、Subaru Research & Development, Inc.

SUBARUは省エネ法に基づきエネルギー使用量(GJ)を算定しています。
なお、一部の国内グループ会社の電力使用量に誤りが生じたため、過年度実績を修正しています。

CO2排出量(スコープ3)
カテゴリ 温室効果ガス排出量(t-CO2
2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
1 購入した製品・サービス 1,703,682 1,992,046 1,583,247 1,430,501 1,726,493
2 資本財 372,211 413,287 282,713 260,566 402,915
3 スコープ1、2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 102,022 103,772 91,851 89,627 95,352
4 輸送、配送(上流) 658,268 737,817 601,167 506,604 426,929
5 事業から出る廃棄物 31,984 32,095 26,446 24,888 28,733
6 出張 4,446 4,554 4,689 4,798 4,878
7 雇用者の通勤 13,506 13,835 14,245 14,576 14,818
8 リース資産(上流) 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし
9 輸送、配送、販売(下流) 13,283 6,049 3,893 4,750 4,043
10 販売した製品の加工 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし
11 販売した製品の使用 33,298,769 34,029,045 27,455,302 23,102,609 27,453,385
12 販売した製品の廃棄 556,139 575,107 484,440 413,368 480,917
13 リース資産(下流) 2,394 2,463 1,998 2,065 1,984
14 フランチャイズ 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし
15 投資 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし
※出所:
環境省・経済産業省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(Ver.2.3)」(2017年12月)および環境省「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.0)」(2020年3月)、SUBARUのライフサイクルアセスメント(LCA)の算定基準によりスコープ3排出量を算定。
「カテゴリ11 販売した製品の使用」では、これまでTank to Wheelベースで算定していましたが、2022年度よりWell to Wheelベースで算定することとし、BEVの使用時の排出量も算定しています。なお、過年度にわたり修正を行っています。
また、「カテゴリ3 スコープ1、2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動」では、一部の国内グループ会社の電力使用量に誤りが生じたため、過年度実績を修正しています。

取り組み

SUBARUは、2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、再生可能エネルギーの利用や高効率な設備・装置への更新により、CO2排出量削減に取り組んでいます。2022年度の再生可能エネルギーの割合はSUBARUグループ全体でエネルギー使用量の6.1%、全電力使用量の18.6%を占め、群馬製作所本工場、宇都宮製作所南工場・南第2工場、エビススバルビル、スバルアカデミーの5拠点で購入する電力はすべてカーボンニュートラルな電力となっています。
加えて、スバル興産株式会社は、群馬県および滋賀県で太陽光発電施設から発電した電力の売電事業を行っています。

2022年度の施策ごとのCO2削減効果
施策 CO2削減効果(t-CO2
再生可能エネルギーの生成(太陽光発電) 4,529
購入電力のカーボンニュートラル 47,197
高効率空調機器の導入 2,000
コジェネレーション設備の更新 3,712
ICT・IoTによる省エネルギー 500
グリーン電力・熱証書の活用 3,962
61,900

群馬製作所

購入電力のカーボンニュートラル(本工場、大泉工場)

水力発電由来の電力のみを販売する料金プラン「アクアプレミアム」を群馬製作所本工場で購入する電力の一部に導入していましたが、2020年11月より「電源群馬水力プラン」に切り替え、全購入電力を水力発電由来の電力とし2022年度は約26,500t-CO2の削減になりました。
また、2022年度の群馬製作所大泉工場の購入電力の7.6%にあたる10,762MWhに対して非化石証書を活用することで、4,907t-CO2を削減しました。

高効率空調機器の導入(矢島工場)

老朽化した第3ペイント工場の冷水供給システムを更新しました。これまでは都市ガスを熱源とする吸収式冷凍機による供給をしていましたが、2022年4月よりターボ冷凍機(電気式ヒートポンプ)の稼働を開始し、7月からはコジェネレーション設備からの温水を吸収式冷凍機の熱源とするジェネリンクの稼働を開始しました。これらの冷水供給システムの更新により、都市ガスの使用がなくなりました。
また、第5ペイント工場では2018年より、冷温水供給にヒートポンプを中心とした高効率の熱源システムを導入し、CO2排出量削減が図られていますが、将来稼働予定の大泉新工場においても水平展開を計画しています。

コジェネレーション設備の更新

群馬製作所の本工場、大泉工場、矢島工場ではコジェネレーション設備を導入し、エネルギーの効率的な利用を行っています。2022年度は大泉工場の設備が稼働開始より15年を迎えたため、老朽更新を行い、6月より稼働を開始しました。更新にあたっては、直近の使用エネルギー構成を考慮し、より一層省エネルギーに寄与する仕様での機種を選定しており、旧型稼働時と比較してCO2排出量を年間3,712t-CO2削減する仕様となっています。

太陽光発電の導入

群馬製作所の本工場、大泉工場では太陽光発電設備を導入し、2022年度は約3,142t-CO2のCO2排出量削減となりました。新築建屋の屋上には太陽光発電設備を仕様段階から織り込み、順次、既存建屋や駐車場にも拡大を検討しています。
また、2022年6月より、矢島工場では、立体駐車場および第5完成検査棟等に合計1,430kWの太陽光発電設備が稼働しており、748t-CO2のCO2排出量削減となりました。

航空宇宙カンパニー(宇都宮製作所・半田工場)

購入電力のカーボンニュートラル
(地産地消型の電気メニュー「とちぎふるさと電気」)

SUBARU航空宇宙カンパニー宇都宮製作所の南工場および南第2工場において、栃木県が保有する水力発電所を電源とした、全国初の地産消費型の電気メニュー「とちぎふるさと電気※1」を2018年度より導入しています。
本メニューの導入により、毎年4,000t-CO2以上のCO2排出量を削減しています。また、本メニューを通じてSUBARUが支出する電気料金の一部は、栃木県内の環境保全事業などに活用されています。

※1
栃木県企業局と東京電力エナジーパートナー株式会社が提供するメニュー。発電時にCO2を排出しない栃木県内8カ所の県営水力発電所で発電した電力を使用するため、電力使用にともなうCO2排出量をゼロにすることができる。

コジェネレーション設備の更新

2021年3月より、CO2排出量削減はもとより、地域社会や従業員への安全配慮を行い、系統電力の長期停電時に発電を開始できるブラックアウトスタート機能を備えた、コジェネレーションシステムを導入しました。

IoTによる工場エアーの安定供給・省エネルギー改善

ICT・IoTによるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を行っており、2019年11月より工場エアー分析システム化、データ解析と対策を実施しています。対策は、「エアーリークの調査・修理」「エアー供給の制限」「コンプレッサーの運転効率化」の3つを行い、年間約500t‐CO2を削減する省エネルギー効果が見込めました。

エアーリーク調査の様子
コンプレッサーの運転効率化

東京事業所

東京事業所は東京都三鷹市で事業活動を行っており、東京都環境確保条例「大規模事業所に対する温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」の対象事業者として、「設備改善による省エネルギー推進」「省エネルギー機器の積極的な採用による省エネルギー推進」の2つの重点取り組みを設け、CO2排出量の削減に取り組んでいます。
再生可能エネルギーの活用にも取り組んでおり、自社施設の屋上に太陽光発電施設(定格出力の合計1,150kW)を設置しています。2022年度は93MWhを発電し、自家消費したことで42t-CO2のCO2排出量削減効果となりました。2022年度は8,535MWhの電力、3,780t-CO2のCO2排出量相当のグリーン電力証書を購入しました。
また、2022年10月に新社屋を竣工。太陽光発電の設置、東西面ガラス、建具、断熱材等の仕様の最適化による遮熱・高断熱対応により、年間20~25t-CO2/年のCO2を削減しました。また施工時のアスファルト冷間工法により38.5t-CO2のCO2削減に寄与しています。

東京事業所

オフィス

本社エビススバルビル・スバル総合研修センター

2021年度より電力の排出係数ゼロの契約メニューに切り替えるとともに、グリーン熱証書の制度を活用しています。2022年度は883t-CO2相当のCO2排出量をカーボンニュートラル化し、実質的にCO2排出ゼロのオフィスとなっています。また、2023年4月からエビススバルビル全館で使用する電力のすべてをCO2排出ゼロの電力に切り替えています。

SUBARU ACCESSORY CENTER

2020年3月に太陽光発電設備を導入し、2022年度は当該施設で発電された電力1,046MWhを利用することで、年間477t-CO2のCO2排出量を削減することができました。

スバル研究実験センター

2017年度より太陽光発電設備を導入しており、2022年度は、スバル研究実験センターの建屋で78MWhを発電し、年間36t-CO2のCO2排出量を削減することができました。

スバル研究実験センター

国内グループ会社

富士機械株式会社

大泉工場では2017年度より太陽光発電設備を導入し、2022年度は35MWhを発電し、年間16t-CO2のCO2排出量を削減しました。

富士機械(株)大泉工場

株式会社イチタン

CO2フリー電力を購入することで、年間3,700t-CO2のCO2排出量を削減しています。

スバル興産株式会社

太陽光発電施設からの電力の売電事業として、群馬県桐生市に定格出力420kWの太陽光発電設備を導入し売電する事業および2021年3月より滋賀県湖南市に1,470kwの太陽光発電設備を導入し、売電する事業を行っています。また、同社が所有する太田Sビルや東長岡寮新棟に太陽光発電を設置し、再生可能エネルギーの利用に努めています。
なお、スバル興産株式会社は、省エネ法に基づき、2019年度より4年連続で優良事業者(Sクラス)として認定されました。これは電気、ガス使用量の5年間平均原単位低減が1%以上の目標を達成している優良事業者に与えられる評価です。

海外グループ会社

Subaru of Indiana Automotive, Inc.

SIAテクニカルトレーニングセンターは太陽光発電を屋上に設置し、屋内の照明にはすべてLED・モーションセンサーを導入しています。2022年は駆動装置、HVACユニット、照明器具をよりエネルギー効率の高いものに更新することで電力使用量を削減しました。

Subaru of America, Inc.

Subaru of America, Inc.の新本社ビルとNational Service Training Centerは、LEED認証※2のなかでも標準認証よりレベルの高いシルバー認証を取得しています。本社ビルとNational Service Training Centerでは、2021年にオートメーションシステムを導入することで、包括な空調システムの導入や効率的なエネルギー使用を図っています。
本社ビルの特徴としては、100%グリーンおよび風力発電由来の電力の使用、SUBARU初のグローバルBEVとなる「ソルテラ」の2022年の発売に向けた充電設備の設置、効率的な空調システムやLED電力の使用などが挙げられます。2021年4月には、本社ロビーにデイライトハーベスティング技術を導入し、太陽光を利用して空間を適切に照らすために必要な電気照明の量を相殺することで、エネルギー消費とCO2排出量を削減しています。

※2
LEED(Leadership in Energy & Environmental Design)は、米国グリーンビルディング協会(USGBC:U.S. Green Building Council)が開発・運営する、環境に配慮した建物に与えられる認証制度。建築全体の企画・設計から建築施工、運営、メンテナンスにおける省エネルギーや環境負荷を評価することにより、建物の環境性能を客観的に示すことができることから、米国を中心にLEED認証の取得が拡大している。
Subaru of America, Inc.の新本社ビルとトレーニングセンター

デイライトハーベスティング技術を導入し、太陽光を有効利用しているSubaru of America, Inc.の新本社ビルのロビー

Subaru Canada, Inc.

2019年に移転したカナダの販売店「Scott Subaru」の建屋はエネルギー効率の高い設計となっており、冷暖房施設などを必要とせず、世界で唯一、販売店としてパッシブハウスの認定を受けました。

物流

SUBARUでは、物流会社、販売会社などのグループ全体や他の自動車会社と協働することで、完成車や輸出部品などの輸送効率化を推進し、物流過程におけるCO2排出量の毎年1%削減に取り組んでいます。
国内の物流および完成車の輸出時のCO2排出量に加えて、2022年度は海外生産用部品と部品用品の輸出時のCO2排出量を把握しました。引き続きCO2排出量の把握範囲を広げ、物流工程のCO2排出量の管理を図るとともに、サプライチェーンマネジメントを強化し、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。

SUBARUの物流体制

完成車の輸送

最適な標準ルートで完成車の輸送を設定し、輸送する車種構成の変化・大型化に対して柔軟に対応するとともに、積載効率向上や、モーダルシフト※3を推進しています。また、物流協力会社にはエコドライブの推進、デジタルタコグラフ※4やドライブレコーダーの導入による運行管理、導風板等の装着による燃費向上への寄与など、環境負荷の少ない運転をお願いしています。
輸送ルートの集約化および平準化をさらに高めたことにより、2022年度のSUBARU車1台当たりの輸送時CO2排出量は、2006年度比15%減の目標に対し22.6%減となりました。今後も、さらなる削減に向けて取り組んでいきます。

※3
貨物輸送をトラック輸送から環境負荷の小さな鉄道輸送や船舶輸送に切り替えること。
※4
自動車の走行時間や走行速度などの運行記録を自動的に記録し、メモリーカードなどに保存するシステム。業務として自動車を運行する業種における運行管理システムとして導入が進められつつある。急加速・急減速、アイドリングの無駄、危険運転などを明確に「見える化」することができるため、安全運転意識の向上、燃料使用量の削減を図ることができる。

輸出部品

SUBARU車の海外生産用部品の輸送では、ハイキューブコンテナの空きスペースの活用、梱包荷姿の見直し、梱包資材の軽量化などのコンテナ充填率の改善に取り組み、2022年度の充填率は98%となりました。
2017年より、コンテナ輸送を効率化するラウンドユース※5を導入し、2022年度のCO2排出量は、2021年度に対し180t-CO2の削減となりました。インランドコンテナデポ※6の活用により、2022年度のCO2排出量は2021年度に対し15t-CO2の削減となりました。また、2020年下期から群馬地区の他社が使用した輸入コンテナの再利用を積極的に活用した取り組みも開始し、2022年度は、2021年度に対し約7t-CO2の削減となりました。引き続き、CO2排出量削減に向けて積極的に取り組んでいきます。

※5
輸入コンテナを空で港に戻さず輸出に転用する。これにより港からの空コンテナ輸送を削減。
※6
内陸部(インランド)にあるコンテナ貨物の集貨拠点。

(年度)

  2018 2019 2020 2021 2022
充填率 79% 94% 85% 92% 98%

部品用品

  • トヨタモビリティパーツ株式会社との共同配送推進
    複雑かつ一部の非効率な輸送体系の解消に向け、トヨタモビリティパーツ株式会社と整備用部品の共同配送を2020年度より開始しています。2022年度末時点で販売特約店8社(14店舗および一部地域の外販お取引先様)にて共同配送を実現しており、今後も他地域での共同配送化の取り組みを推進します。
    なお、共同配送に切り替えたことにより、一部特約店において、リードタイムの1日短縮や、運送費の約25%低減を実現できました。
  • 電動対応フォークリフトへの切り替え
    群馬の部品物流センターでは、LPG搭載フォークリフトから電動対応フォークリフトへの切り替えを順次進めています。災害・停電時には電動フォークリフトを蓄電池として利用できる備品も備え、非常時の通信手段の確保などにも活用していきます。

Subaru of America, Inc.

物流工程のCO2排出量を減らすために鉄道の利用を促進しています。また、アラスカの販売店向けの海上輸送についてもLNG活用により排出量の削減に取り組んでいます。これらの取り組みにより25%のCO2の削減、95%のNOxの削減、99%のSOxの削減を実現しています。

販売

国内販売特約店では、老朽設備更新のタイミングで照明のLED化と空調機の高効率タイプへの切り替えを順次進めています。また、カーボンニュートラルな電力購入を2021年度までの東京スバル株式会社、神奈川スバル株式会社、千葉スバル株式会社に加え、2022年11月末からは東海地区SUBARUグループ3社(名古屋スバル自動車株式会社、岐阜スバル自動車株式会社、三重スバル自動車株式会社)でも開始しました。電力購入の切り替えにより、2022年度で5,791t-CO2を削減しました。
今後も「エネルギー消費=CO2排出(カップリング関係)」という考えから「エネルギー消費≠CO2排出(デカップリング関係)」へと発想を転換し、人と地球にやさしい販売特約店づくりに取り組んでいきます。

カーボンプライシング

排出量取引制度

東京都、埼玉県で事業活動を行っている東京事業所、北本工場、ステラタウン大宮は、東京都環境確保条例「大規模事業所に対する温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」あるいは埼玉県の「目標設定型排出量取引制度」の対象事業者として、排出量取引制度の対応を行っています。

インターナルカーボンプライシング

SUBARUは2022年度よりインターナルカーボンプライシングを導入しました。各拠点での設備投資の稟議書のなかで、該当設備の導入にともなうCO2削減量を6,000円/tにて金額換算を行い、CO2削減効果を費用削減効果として計上することで、設備投資の判断に盛り込むこととしています。この手法はシャドウプライシングに分類されるもので、このインターナルカーボンプライシングの導入により、設備担当者のCO2削減の啓発につながるとともに、CO2削減効果の高い設備に対する投資が促進されることを目的としています。

外部との協働

SUBARUは気候変動について、お取引先様やお客様、業界団体などと協働することにより、対応を図っています。

トヨタ自動車株式会社とのアライアンス

SUBARUとトヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)は、SUBARUのAWD技術とトヨタの電動化技術を活用したEV専用プラットフォームおよびEV車両開発に取り組むことで合意しています。両社の持つ技術の強みを掛け合わせることで、EVならではの魅力ある商品づくりを目指しており、BEV専用プラットフォームとしてトヨタと「e-スバルグローバルプラットフォーム」を共同開発しました。

お取引先様

お取引先様の選定や管理メカニズムに、気候関連問題を盛り込んだ行動規範を定め、オリエンテーション時に共有および徹底を図っています。
また、お取引先様にISO14001の認証取得を推奨することにより、サプライチェーンでの環境関連の事故・不具合の未然防止や、環境法令への抵触リスクの削減に努めています。
また、新たな取り組みとして、2022年度はサプライチェーンでの脱炭素化を目的に、お取引先様320社を対象とした説明会をオンデマンド式にて開催し、お取引先様とはSUBARUのCO2の排出量削減目標を共有しました。さらに、287社(全体の90%、取引額比率では99%)のお取引先様よりCO2総排出量の報告をいただき、お取引先様ごとのCO2排出量の見える化を行いました。また、一部のお取引先様を対象に、部品単位でのCO2排出量の算出トライアルを実施しました。

業界団体

一般社団法人日本自動車工業会(JAMA)の気候変動対策に関する委員会に、メンバーとして参加しています。また、代表取締役社長および取締役専務執行役員は、JAMA役員として機関決定に参加し、JAMAの決定はSUBARUの中期経営ビジョンに反映しています。

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同

SUBARUは、気候変動への取り組みは最も重要な課題の一つとして認識し、これまでも気候変動に関する情報開示を進めており、このたびTCFDの提言に賛同しました。SUBARUのTCFDの推奨開示項目に関する開示状況は、TCFD対照表(https://www.subaru.co.jp/csr/tcfd/)をご参照ください。