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2022.11.30

ベンソン選手、なぜそんなに強いのか? 

ニューイヤー駅伝2023まであと1カ月!

前回、2位になったSUBARUは、今年も快走して皆さんに元気をお届けすべく、日々練習に励んでいます。
そんな私たちについて知っていただき、1月1日はぜひ、走りを思い切り楽しんでください。

本日は、キプランガット・ベンソン選手はなぜこんなに強いのか。その理由に迫ります。

 

速い!強い!

ベンソン選手は、試合に強い選手です。

まず、ニューイヤー2022で2区を走って区間賞。11月3日の東日本実業団駅伝でも区間新記録で区間賞に輝きました。駅伝を2回走って、区間1位しか獲ったことがないのです!その後もベンソン選手は、出走したほとんどの大会でトップ争いに食い込みました。

ニューイヤー駅伝2022で、トップに立つベンソン選手(右)

 

そして記録。6月には5000mで13分10秒41を出しました。日本人であれば大迫傑選手の持つ日本記録に次ぐ歴代2位となる高速タイムです。そして、11月には初めて10000mに挑戦。27分9秒83と、日本記録(27分18秒75)を9秒近くも上回るタイムを出し、いきなり世界選手権参加標準記録を突破。周囲を驚かせました。

 

理由1 恵まれた体格

では、ベンソン選手、なぜこんなに速く、強いのでしょうか。

その理由の一つは、体格に恵まれていることです。
ベンソン選手と会った時のことを、奥谷亘監督は「一目見て、素晴らしい選手だと確信できました」と、振り返ります。

ベンソン選手は華奢に見えますが(上)、背中や腕にはしっかり筋肉がついており、ガッチリしています(下)

 

「脂肪はないのに、筋肉は、肩、脚、背中などの、つくべきところにしっかりついていて、まるで彫刻のような体付きです。だから、華奢に見えますが、実は腕や太ももなどはしっかりしていて、胸元も厚い。
ケニアの選手は体格に恵まれていますが、その中でも別格でした。おそらく、生まれつき恵まれていた体が、トレーニングと節制によってさらに強化されたのだと思います」。

 

理由2 ムダのない走り

その走りも、奥谷監督を感激させました。「ベンソン選手は、地面をスルスルスルとはうように走り、ゆったりとしているので、そんなに速く走っているように見えません。しかし、タイムはめちゃくちゃ速い。つまり、ムダな力を使うことなく、効率的に進んでいるのです」。

 

理由3 強靭で冷静なマインド

並外れて強靭なマインドも、ベンソン選手の特長です。

ベンソン選手は昨年来日しましたが、新型コロナウイルスによる制限の関係で予定より遅れ、2021年の11月末に日本に到着しました。待機期間を経てチームに合流したのは、12月20日過ぎ。なんと、ニューイヤー駅伝までもう2週間を切った頃でした。

この時、ベンソン選手はまだ18歳。なじみのない外国で、寒い冬を過ごすのも初めてなら、駅伝を走るのも初めてでした。

寒さと緊張でガチガチになってもおかしくない状況ですが、2022年1月1日早朝、ベンソン選手は落ち着いた様子で笑顔を見せながら、明るく宿舎を出発しました。

2022年1月1日、2区のスタート地点に向かうため、付き添い係の国川恭朗選手(右)と一緒に笑顔で宿舎を出るベンソン選手(左)

 

淡々と中継地点に立ち、1区の鈴木勝彦選手から、先頭と16秒差の10位でたすきを受け取りました。スタスタと走り出すと、終始落ち着いた表情で、並み居る高速ランナー次々と抜き去ります。ついにトップに立つと、1位のまま3区の梶谷瑠哉選手にたすきをつなぎました。

試合後は「いい走りができて良かったです」とほほ笑んでいたベンソン選手。初めての駅伝で区間賞を獲得したこの大会は、強靭で冷静な性格がよく表れていました。

ニューイヤー駅伝2022で2位が決まり、梶谷瑠哉主将(左)と手をつないで喜ぶベンソン選手(右)

 

理由4 高い集中力

「ベンソン選手は陸上競技に対して強烈な執着を持ち、世界のトップをめざすことだけに集中している」と奥谷監督は言います。

たとえば、外国人選手は母国を懐かしんで一時帰国を望むことがしばしばあります。ベンソン選手も時折口にしますが、ホームシックではなく「自分より速い選手たちと練習して、試したいことがある」など、いつも陸上が理由です。

逆に、陸上に関係のないことは興味が向かないそうで、休日もあまり遊びに行くことはなく、ゆっくり散歩してリラックス。大会の時には、シューズやタオルなどをスーパーのビニール袋に入れて持参することも。走ることに関係のないカバンなどには、まったくこだわりません。

9月に行われた全日本実業団陸上大会ではスーパーのビニール袋をカバン代わりにし、シューズや着替えを入れて持ち運んでいました 

 

「自分の使命をしっかり理解し、集中して陸上に取り組む様子は、とても19歳とは思えない」と奥谷監督も舌を巻きます。

 

理由5 おそるべき潜在力

さらに驚くべきは、これだけ速く、強いベンソン選手ですが、まだまだ粗削りで、伸びしろの塊である点です。

たとえば、ケニアは高地の国ですが、ベンソン選手は日本との標高差を意識せずに練習メニューを組み立てていました。コーチたちに教えてもらい、最近では練習でのタイム設定の際、標高がケニアより低くてタイムが出やすい日本で行う場合は、速く設定するようにするなど、少しずつ知識を身に着けています。

また、圧倒的な速さで試合に勝つベンソン選手ですが、いまはまだ、「駆け引き」をあまり意識していません。ここも、トレーニングによって伸ばせるところで、まだまだ強くなるでしょう。

「これからいろんな知識や技術を身に着けていったらどこまで強くなるのか。可能性は、計り知れません」と奥谷監督は言います。

 

大好きなミルクティーは強さの源。たっぷり砂糖を入れて、1日にジョッキ2杯は飲むそうです

 

ベンソン選手インタビュー
「連続区間賞を狙います!」

ベンソン選手に、強さの理由とニューイヤー駅伝2023への意気込みを語ってもらいました。

「僕が速いのは、厳しい練習をたくさんしているからです。内容で変わったことをしているわけではありませんが、練習量は多いと思います。スピードを出すようなキツイ練習をたくさん行います。

また、試合当日は、自分の調子や気温などから、自分の力がいちばん発揮できるようペース配分を考えます。とても頭を使って走っているんですよ。

頭を使って走るようになったのは、(マラソン世界記録保持者で五輪2連覇中の英雄)エリウド・キプチョゲ選手の影響です。母国ケニアでの陸上クラブで、キプチョゲ選手の練習を見たり、実際に言葉も交わす機会に恵まれました。その時、『頭を使わなきゃダメだよ』とアドバイスしてもらい、それを実践しています。

ニューイヤー駅伝では、もちろん連続区間賞を狙います!楽しみにしていてください」

 

底知れぬ、圧倒的な強さを見せるベンソン選手。ニューイヤー駅伝2023でも、その走りにご期待ください!

 

 

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