技術特集インタビュー

AUTOMATIC DRIVING
AUTOMATIC DRIVING
柴田英司
柴田英司

「自動運転」という概念を追うのではなく、価値を追求する。

「自動運転」という言葉がもてはやされていますが、他の多くの技術と同じように、自動運転もあくまで手段のひとつでしかない。何のための手段かといえば、SUBARUのクルマを買って下さるお客様の生活を豊かにするためです。たとえば、自動運転のシステムが搭載されたクルマであれば、ドライバーへの負担を軽減でき、安心してより遠くまで行くことができる。行動範囲が広がれば、多くのものを見たり経験したりすることができ、人生は豊かに広がっていきます。こういった、乗る人を中心に考えたクルマづくりこそ、実はSUBARUの原点。1960年代に国民車として人気を博したスバル360も、コンセプトは「家族4人で乗れるクルマをつくる」でした。それまでの軽自動車はとても狭く、大人2人がやっと乗れる程度の大きさ。

エンジンの性能も低く、実用車として軽自動車が使われることはありませんでした。スバル360の開発では、中島飛行機の時代から培った航空機技術を応用して超軽量構造を採用。限られたスペースを最大限に生かして居住性を確保する、当時としてはとても斬新なアイディアや技術がたくさん盛り込まれていただけではなく、多くの方に親しんでいただける価格設定と快適な走行性能を両立できたことも評価が高い理由でした。スバル360を生み出せたのは、開発に携わったエンジニア全員が「家族4人で乗れるクルマ」を実現できれば、もっとお客様に喜んでいただけると考えていたからだと思います。

SUBARUの技術者にとって大切なのは、常にエンドユーザーの顔を思い浮かべて開発すること。私も若いころ、幾度となく先輩にそう叩き込まれましたし、今は若い人に向け、何度もそう伝えています。技術オリエンテッドも悪くはないと思いますが、それはSUBARUらしいものづくりではない。その姿勢は自動運転という技術に対しても変わりません。

懸命につないだ技術「ぶつからないこと」への愚直な追求。

自動運転分野の技術で、今SUBARUがお客様に提供しようとしている価値。それは目新しいことではなく、自動車にとっての普遍的テーマとも言える「安全」と「安心」です。たとえば、衝突を回避する運転支援システム「アイサイト」も、同じように「安全」と「安心」という価値にこだわって生み出された技術のひとつ。リーズナブルな価格帯で2010年にLEGACYに搭載され、運転支援システム普及の先駆けとなったアイサイトですが、長い開発期間はまさに苦難の連続でした。さかのぼれば、80年代から取り組んできた高性能ステレオカメラの技術と、90年代に開発したADA(アクティブ・ドライビング・アシスト:予防安全/運転負荷軽減)いう技術。

時代に先駆けた開発でしたが、それらはまったくと言っていいほど普及しませんでした。初期には数千万円の開発予算が割かれていたものが十分の一に減少し、2005年には開発の打ち切り寸前という状況を国からの補助金で賄いながら、なんとか開発を継続しているような状況。そんな中、開発エンジニアが愚直に取り組んでいたことは、日本中のお客様の元に出向いてヒアリングをすることでした。その時に気づかされたのは、お客様が求めていることは「世界初」という看板や「先端技術」ではないということ。

安全で安心して愉しむことができるクルマを、手の届く価格で提供することこそ、SUBARUが成すべきことだと気づかされました。これは大きなブレイクスルーとなり、あれもこれもと膨らませがちだった機能を絞り込むことにつながり、その延長線上にアイサイトの誕生や自動運転があります。自動運転分野はSUBARUにとって、愚直に取り組んできた技術と連続しているのです。

ドライビングを愉しむことと、自動運転は両立できるか。

自動運転分野の技術の発展は、クルマの愉しさを失わせるものでは決してないと考えています。クルマがドライバーの認知能力をサポートすることは、長く運転することを可能にし、人はもっと遠くまでのドライブをストレスなく愉しめるようになります。また、自動運転モードに切り替えてフラつくようなクルマでは怖いので、クルマ自体の安定性がこれまで以上に求められる。

つまり、自動運転分野の技術を発展させるためには、「走る」「曲がる」「止まる」といったクルマのベースとなる走行性能も高めなければいけないため、クルマ全体がより良くなっていくのです。自分自身が乗ってわくわくする、運転が愉しいと思える、そういうクルマがつくりたい。

SUBARUのエンジニアは、みんなそう思って開発しています。ここから生み出される技術とクルマは、愉しくないわけがないのです。

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