SUBARUの安全技術
SUBARUの安全技術
死亡交通事故ゼロに向けたシナリオ
例えば、日本ではすべての座席でシートベルトの着用が義務化され、運転席および助手席とも着用率が96%を超えていますが、後部座席同乗者の着用率は一般道路で、45.5%、高速道路等で79.7%と、運転者や助手席同乗者に比べ低調です。一方、後部座席シートベルト非着用時の致死率(死傷者数に占める死者数の割合)は、高速道路で着用時の約16.6倍、一般道路で着用時の約2.7倍も高いという調査結果があります3。当社はより多くの方にシートベルトを着用いただき、万が一の事故に遭った場合の被害を最小限に防ぐため、2020年に発表したレヴォーグから世界で初めて警報音付き後席ベルトリマインダーを搭載し、順次各モデル展開をしています。レヴォーグ導入1年後に実施したユーザーへのWebアンケートでは、この機能により約70%の方が新たにシートベルトを着用するようになったと回答結果が出ました。このように事故の実態から効果的な機能を搭載していくことで、事故低減、死亡交通事故ゼロを目指していきます。
また、2017年から2022年に米国で発生したSUBARU車に絡む死亡交通事故668ケース4の分析結果などを基に、交通ルール違反や相手側の著しい危険な行為がともなうなどの事故5を除いたすべての死亡交通事故を防ぎ、また、今後世の中で起こり得る様々な原因の死亡交通事故にも対応できるよう技術開発に取り組んでいます。事故に遭わないための基本設計「0次安全」と、走りを極めれば安全になるという考えの「走行安全」の領域とともに、「予防安全」「衝突安全」「つながる安全」の各領域の重なりを増やし冗長性の高い安全性を目指します。また、交通ルール違反や相手側の著しい危険な行為がともなうなどの事故についてもユーザーへの啓発活動や、ルールの提案や道路環境の整備への働きかけなどの取り組みを進めていきます。
*1:SUBARU車に乗車中の死亡事故およびSUBARU車との衝突による歩行者・自転車などの死亡事故ゼロを目指す。
*2:Fatality Analysis Reporting System 米国内で発生したすべての死亡交通事故が記載された一般公開データ。
*3:出典:「全ての座席でシートベルトを着用しましょう」(警察庁)。
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/seatbelt.html
*4:SUBARU乗車中の死亡事故およびSUBARUとの衝突による歩行者・自転車等の死亡事故 全668件。データ出典:FARS
*5:トレーラーのような大型車両に前後から挟まれたケース、一方通行のハイウェイの逆走車と正面衝突したケース、夜間のハイウェイに侵入した歩行者を撥ねたケース等を含む。
自動車アセスメント
SUBARUは、日本のJNCAP6、米国のIIHS7、U.S. NCAP8、欧州のEuro NCAP9、豪州のANCAP10など国内外の公的機関による安全性能試験・評価を受けており、最高ランクの評価を多数獲得しています。
2024年度は、IIHSにおいて、2025年5月時点でSUBARUの2025MY(モデルイヤー)車の1車種で「2025 TSP+賞」、2車種で「2025 TSP賞」を獲得しました。U.S.NCAPにおいては、2025MY車の8車種で「OVERALL VEHICLE SCORE 5★」を獲得しました。Euro NCAPにおいては3車種で2024年評価で5★を獲得しました。ANCAPにおいては、2025年7月時点で3車種が2024年評価で5★を獲得しました。
*6:JNCAP(Japan New Car Assessment Program):国土交通省と独立行政法人 自動車事故対策機構が実施する自動車の安全性能評価。
*7:IIHS(The Insurance Institute for Highway Safety):米国道路安全保険協会
*8:U.S. NCAP(U.S. New Car Assessment Program):米国運輸省道路交通安全局(NHTSA:National Highway Traffic Safety Administration)が実施する安全性能評価。
*9:Euro NCAP(European New Car Assessment Programme):欧州で行われている自動車の安全情報公開プログラム。
*10:ANCAP(The Australasian New Car Assessment Program):豪州、ニュージーランドの交通関連当局などで構成された独立機関が実施している安全性能評価。
自動車アセスメント
衝突安全技術の継続的な強化
日本の死亡交通事故では頭部、胸部を受傷し亡くなる方が6割を超えています。拘束装置の高度化により、ニーエアバッグやシートクッションエアバッグが乗員の下半身をしっかり保持し、衝突時の上半身への負担を軽減します。さらに、乗員の体格を判別してシートベルトの加重を調整することで、必要以上の圧力がかからないようにし、様々な体格の乗員を安全に保護できるようにしています。しかし、拘束装置が進化してもシートベルトを適切に装着していなければ十分な効果を得られません。国内における一般道での後席シートベルトの装着率が低いことを踏まえ、SUBARUはこの状況を改善するべく、シートベルトリマインダーをすべての席で実用化し、装着モデルを拡大してきました。
また、乗員の保護だけでなく、SUBARU車と衝突する相手も保護する相互安全に取り組んでいます。バンパービームの 拡大やサブフレームの追加などにより、相手車両をしっかり受け止める構造を採用することで、自車だけでなく相手の被害も軽減することができます。
今後、さらに事故低減するためには、今まで以上に多様でシビアな事故を想定する必要があります。例えば、対自転車の衝突においては、サイクリストの体格や衝突時の自転車とクルマの向きや速度などのあらゆるケースを想定すると、現在の歩行者エアバックでもある限られた条件においてはカバーしきれない場合があることが分かりました。このように、無限に考えられる衝突パターンからコンピューターシミュレーションによりワーストケースを見つけ、具体的な対策を進めています。
自動車アセスメント
予防安全技術のさらなる発展
アイサイト誕生から17年
2008年、世界初となるステレオカメラだけで「プリクラッシュブレーキ」や「全車速追従機能付クルーズコントロール」を実現したシステム「アイサイト」が誕生しました。2010年に発表したver.2では、プリクラッシュブレーキの改良によりクルマが完全停止するまでサポートできるようになり、この頃から国内アイサイト搭載モデルを拡大展開し、お求めやすい価格を設定したことで知名度や普及率が大きく高まり、その後さらに海外にも順次展開していきました。2014年に発表したver.3ではステレオカメラのカラー認識の実現および視野の拡大により先進安全機能を大幅に向上させ、2020年に発表した「レヴォーグ」では新開発のステレオカメラに前後4つのレーダーや高精度地図ロケーターなどを組み合わせた高度運転支援システム「アイサイトX」を展開しました。クルマの運転は想像以上に体力を使いますが、アイサイトXの機能により負担を軽減し、長距離運転でも疲れて注意散漫になることなく、安全に出かけて愉しんでいただくことを狙いました。2022年には、北米市場向けの主力車種「アウトバック」に、アイサイトの認識能力を強化する「広角単眼カメラ」を新たに採用しました。ステレオカメラと超広角の単眼カメラによって「3つの目」に進化したことでこれまで以上に広い範囲を認識できるようになりました。これにより、多くのお客様が体験されているヒヤッとするようなシーン、特に交差点で死角の車両脇から飛び出してくる歩行者や自転車を早めに察知し、衝突回避や、万が一の衝突時の被害軽減を支援しています。
アイサイトが搭載する「ステレオカメラ」の特長は、人間の目と同じように2つのカメラで対象物を認識するため、レーダーよりも多くの情報を認識し、道路上の物体や先行車、歩行者、道路形状などをより正確に検出することです。その開発がスタートした約30年前はまだカメラが捉えた画像を距離画に置き換え、そこから立体物を検出する技術が一切ありませんでした。当社もまだステレオカメラの特長を掴みきれず、雨やガラスの曇りなどで正常に検知できないなどの課題も多くありましたが、社会問題の一つである車両事故の低減に真摯に向き合い、様々な事故分析と各シーンを走り込み改良を繰り返し、一つずつ課題をクリアして進化を続けてきたことで、2008年に国内で発売を開始以降、2025年6月時点で世界累計販売台数は約760万台となりました。
新世代アイサイトのステレオカメラ+広角単眼カメラ
アイサイト開発において積み上げてきたこと
事故を低減していくためには、単に技術を搭載するだけではなく、「多くのお客様にご購入いただきやすい価格で最高の性能をお届けすること」で、安全な技術を搭載した車を普及させていくことが必要だと考えています。価格を抑えながら性能を引き上げることは非常に難しいチャレンジです。徹底的にコストを抑えつつ、最適化したシステムの中でどれだけ精度の高い機能の実装を突き詰められるかが重要であることから、当社ではセンサーのソフトウェアも制御のソフトウェアも内製しています。当社のエンジニアは、全世界の様々なフィールドに行って徹底的にデータを取り、自らセンサーや制御のソフトウェアを修正して、お客様がクルマの挙動を不安に思うことがなく、違和感のない制御となるよう徹底的にフィーリングにこだわり開発を進めています。センサーや制御に関する課題対応は圧倒的に内製開発の方が早く、商品化の前に何度もが蓄積されていることが当社の強みにつながっています。
「アイサイト×AI技術」による認識技術の強化
SUBARUは、予防安全技術をさらに高めて死亡交通事故ゼロの実現に向かっていくため、新しいテクノロジーを加えていくことに挑戦しています。現在、特に注力しているのがアイサイトにAI技術を組み合わせる取り組みです。
ステレオカメラを用いた空間認識の基本原理は、右と左の2つのカメラに映った画像のズレを三角測量によって解析し、画素ごとに対象物との距離を正確に算出することです。カメラに映るものすべてを高精度に立体化することで、あらゆるものの形や距離を捉えることができることがアイサイトの強みです。しかし、対象が小さな物体や微妙な凹凸などの場合、それを乗り越えるべきか、障害物と判断して止まるべきか、アイサイトの画像認識だけでは判断しきれない非常に難しいケースもあります。一方AIは、過去に学習した膨大なデータをもとにカメラに映った対象物を画素ごとに分類することが得意です。アイサイトで認識した対象物との距離と、AIで認識した対象物の分類を完全に同じ画像上で融合できるため、アイサイトとAIは相性が非常に良いと捉えています。実用化できれば、今まで以上に運転環境の情報を詳細かつ正確に認識することができるようになるため、より様々な状況においてクルマの安全性を高めることにつながると考えています。
この取り組みは、これまでと異なる視点で新たな発想を生み出す環境をつくるために、独立したオフィスとして新設した「SUBARU Lab(スバルラボ)」で行っています。近年の再開発により「ITの集積地」として進化している渋谷に新拠点を構えたことにより、AI開発に必要な人財のスムーズかつ的確な採用やIT関連企業との連携などを可能とし、従来以上にスピード感のある開発の実現につながっています。

2024年4月にはSUBARU Labで開発をしているAIを搭載する次世代アイサイト向け半導体(SoC:System on Chip)として、AMD社のVersal™ AI Edge Series Gen2を採用し、同社と共に最先端のAI推論性能や超低遅延な演算処理を低コストで実現するため、SoC最適化に向けた回路設計を行う協業を発表11しました。当社はこの協業において、性能・消費電力・コストを最適化するため半導体の回路設計にまでこだわりを持ち、汎用版のSoCに含まれる当社に不要な回路を外しつつ高速な計算が必要な処理を電子回路として追加するカスタムSoCを開発いたします。
2024年11月には、ステレオカメラとAI推論を融合した認識処理の性能向上に向けて、オンセミ社と、Hyperluxイメージセンサ「AR0823AT」の専用設計に関する協業を開始することを発表12しました。この協業により「AR0823AT」に対するAI推論処理に最適な視覚データを取り込むための専用設計を可能とし、当社が長年内製により蓄積してきたステレオカメラによる認識技術をさらに磨き上げるとともに、2020年代後半の次世代アイサイトに搭載することを目指します。
*11:2024年4月19日 SUBARUとAMD、ステレオカメラとAI推論処理を融合するSoC設計に関する協業を開始
https://www.subaru.co.jp/news/2024_04_19_154136/
*12:2024年11月19日 SUBARUとオンセミ、イメージセンサの専用設計に関する協業を開始
https://www.subaru.co.jp/news/2024_11_19_112806/
