2022年1月1日、群馬には例年以上に強烈な北西の風「赤城おろし」が吹きすさびました。
立っていられないような強風。オリンピアンたちさえも苦しむなか、SUBARUには勝利への手応えをつかんでいた選手がいました。 5区を走った照井明人選手、6区の小山司選手です。
5区も6区も、「赤城おろし」が向かい風となるコースです。 強風に翻弄されたランナーも少なくなかったなかで、なぜ2人は「赤城おろし」を制することができたのでしょうか。
まず、小山選手に聞いてみました。
キツいコースが得意になったワケは…
小山選手は、マラソン元日本記録保持者の設楽悠太選手(Honda)、啓太選手(日立物流)と幼なじみ。陸上を続けるなかで、設楽兄弟をはじめ、天性の才能に恵まれた選手を見てきました。
小山選手は「自分はそういう選手ではありませんでした」と言います。ただし、それを嘆くのではなく、「そうではない自分は、どうやれば天才と戦えるだろう」と考え続けました。
「考えているうちに、自然と上り坂や向かい風など、難コースや悪条件に強くなっていました。つまり、努力で強化、克服できるところだったんです」。
”小山スタイル”で結果出す
「自分はギリギリのところを攻めないと、勝つことはできない」と、小山選手は、膨大な距離を踏み、自分を追い込む練習を重ねました。
それはケガのリスクと背中合わせのやり方。小山選手はたびたび足を傷めました。 ケガは、どの選手にとってもつらいこと。しかし、小山選手は勝つために、ケガをしても黙々とリハビリに励み、ここという勝負どころに照準を合わせて調整する――という”小山スタイル”を貫きました。
坂道走に励む小山選手(右から2人目)
そうして結果を出してきた小山選手。2020年には別府大分毎日マラソンで2時間8分53秒の素晴らしい記録で4位となる快挙を成し遂げました!
2021年度も、前半に足をいためましたが、その目はニューイヤー駅伝をしっかり見据えていました。 そして、2021年11月27日の記録会「八王子ロングディスタンス」で10000mをシーズンベストの記録で走ると、ニューイヤー駅伝2022の6区を任されました。
2021年の八王子ロングディスタンスで力走する小山選手(右)
”鋼のマインド”で、赤城おろしに克つ!
2022年1月1日。例年以上の赤城おろしが吹きすさぶ中、小山選手は桐生市役所前の第5中継所に立ちました。
5区の照井選手からたすきを受け取ります。走り出して800m付近で角を曲がったとたん、猛烈な向かい風が襲いかかってきました。
6区は、激しいアップダウンが続く難コース。立っていられないような強風のなか、行く手には、いくつもの坂道が待ち構えるーー心が折れてもおかしくない状況でした。
赤城おろしが吹く中、上り坂を懸命に走る
しかし、ケガで走れない期間が長かった小山選手のマインドは、鍛え抜かれていました。 向かい風を浴びた時、「この苦しさを味わえるのも、ロードを走っているからこそ。それに、自分は向かい風には絶対の自信がある。これは勝てる、と思えて、キツい状況がうれしく、喜びをかみしめました」。 心が折れるどころか、楽しく走っていたのです。
ニューイヤー駅伝で、小山選手(左)は、中山顕選手(Honda、右)とトップ争いを繰り広げた
そして、強風吹きすさぶなかで次々と現れる急な坂道を、「限界まで、粘るのみ」と言い聞かせて力走。
強力なライバルたちが風に翻弄されるなか、区間2位となるすばらしい走りを見せ、アンカーの口町亮選手にたすきをつなぎました。
大一番の場面で吹いた強烈な「赤城おろし」。 不断の努力で、走力とマインドを鍛え上げ、難コースと悪条件を得意とする小山選手にとっては、この向かい風がむしろ追い風となり、見事勝利することができたのです。
区間賞を、狙います!
小山選手は今年も持ち前の調整力を発揮。11月26日にあった八王子ロングディスタンスで、10000mの自己ベストを更新する好走を見せ、ニューイヤー駅伝に向け、しっかりアピールしました。
「もしまた6区を走ることになったら、区間賞を狙います!」と気合いを入れています。