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2021.10.26

奥谷亘監督が涙を流した訳は?SUBARU陸上部「勝利への戦略」(前編)

11月3日、いよいよ東日本実業団対抗駅伝(東日本予選)が開かれます。

ニューイヤー駅伝の予選にあたるこの大会で、SUBARU陸上部は昨年、選手の体調不良に見舞われて敗退し、ニューイヤー駅伝への出場権を獲得できませんでした。

地元・群馬の地域活性化を至上命題に1998年に創部。2001年元旦以降、ニューイヤー駅伝には20年連続出場を果たし、会社と地域の大きな期待に応えてきました。そんなチームにとって、昨年のニューイヤー不出場は、あまりにもつらい結果でした。

ただ、奥谷亘監督は、これまでに経験のないこの苦しさ、悔しさを、チームの成長につなげる「勝利への戦略」を立てました。一体、どんなことに取り組んだのでしょうか。2回に分けてお伝えします。

 

|高い目標に向かうための「痛み」

ニューイヤー駅伝に20年連続出場を果たし、会社と地域の大きな期待に応えてきたSUBARU陸上部。一方、2011年から指揮する奥谷監督の目標は、ニューイヤー駅伝で常に入賞するという、もっと高いところにありました。

悔しさをバネにチームを成長させた1年を振り返る奥谷亘監督

それだけに、奥谷監督は昨年、ニューイヤー駅伝の出場を逃した時のことを、

「きついどころではない。本当にみじめでした」と振り返ります。

どん底に突き落とされながら奥谷監督は、
「今回の敗戦が大きなショックだったからこそ、ジャンプアップして入賞の目標達成につなげなければならない。このチームを、生まれ変わらせる」

そう決意し、まずは選手たちと敗戦の痛みに向き合うことにしました。

 

|須永副部長の激励で目が覚める

選手の体調不良が原因とは言え、予選敗退というつらい結果をきっかけに、チーム内であらゆる意見が噴出しました。この時、場を引き締めたのは、須永修司・運動部副部長でした。

チームを支える須永修司副部長

「監督の指示は、会社の指示だ。ここを理解し、監督のもと、チーム一丸となって戦ってほしい」。

須永副部長のこの激励でチームは目が覚め、まとまりを取り戻していきました。

 

奥谷監督も、指導方針を見直しました。2006年の福岡国際マラソン4位など世界との戦いで結果を出し、勝つために必要なことを熟知する奥谷監督は、選手に厳しい練習を課してきました。しかし、ニューイヤー駅伝出場を逃し、選手がかつてない悔しい思いをしている今を、自主性を重んじる好機と考えました。今なら、選手一人一人が自らの走りの特性や現状の課題を理解し、自ら厳しい目標に向かっていくだろう、と考えたのです。

 

また、陸上長距離界の高速化の流れの中、長い距離を走る従来の練習とは異なる志向を持つ選手もいて、これまでの常識にとらわれない、新しい感性が求められていました。そこで、奥谷監督自身で課題を抱え込むことなく、これまで以上にコーチを頼るようにしていきました。

 

|ある選手の決意

こうした努力を重ねる奥谷監督を見ていたひとりの選手が、2020年の年末にある決心をしていました。入部4年目の藤原滋記選手です。

「チームに元気を取り戻したかった」と語る藤原滋記選手

「予選敗退で沈んでいるチームの現状を変えたい。チームにとってプラスになることがしたい」。それは、試合で結果を出すことだと考えた藤原選手は、2021年2月の全日本実業団ハーフマラソン大会でいい記録を出し、チームを活気づけることを誓ったのでした。(つづく)

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