CTOと若手エンジニアが語る!SUBARUが『魔改造の夜』に挑んだ理由と未来への想い

記事内の日付や部署名は、取材当時の情報に基づいた記述としています

仕事は違っても、「笑顔をつくる」という想いでつながる「SUBARUびと」。 今回は、エンジニアたちが日用品や家電製品を「魔改造」してモンスターマシンに仕立て、そのアイデアやテクニックを競技形式で競うNHKの人気番組『魔改造の夜』への挑戦を振り返り、『魔改造の夜』プロジェクト代表(統括)を務めたCTOの藤貫さん、ブランコチームメンバーの秋山さん、スリッパチームメンバーの伊藤さんが、挑戦の背景や未来への想いについて語ります。プロジェクトの詳細は、『魔改造の夜』特設サイトをご覧ください。

目次

藤貫 哲郎(ふじぬき てつお)さん

藤貫 哲郎(ふじぬき てつお)さん 取締役専務執行役員 CTO(最高技術責任者)

1986年に入社。2020年よりCTOを務め、2023年より現職。『魔改造の夜』では、プロジェクト代表(統括)として、ブランコとスリッパの両チームを見守った。

伊藤 健吾(いとう けんご)さん

伊藤 健吾(いとう けんご)さん技術本部 車両環境開発部

2011年に入社。車両研究実験第三部で燃料タンクや関連部品の開発に携わった後、2016年より現職で、走行時の抵抗を低減するための技術開発に従事。『魔改造の夜』ではスリッパチームに所属し、チーム内の連携を深める役割(ヨコグシ)を担いながら、スリッパの軽量化を担当した。

秋山 優奈(あきやま ゆうな)さん

秋山 優奈(あきやま ゆうな)さん技術本部 ADAS開発部

2017年に入社し、現在の部署に配属される。入社以来、車両後方の障害物情報を利用してブレーキを制御する機能(後退時ブレーキアシスト*1)の量産車開発に従事。『魔改造の夜』ではブランコチームに所属し、魔改造にかかる費用の管理を担当した。

*1: 後退時に後ろの障害物を検知し、衝突しそうな場合は注意を喚起。さらにはブレーキ制御によって衝突回避をサポートする機能。

「面白そうだからやってみよう」挑戦の舞台裏

―― SUBARUが『魔改造の夜』に挑戦したきっかけを教えてください。

藤貫 :
きっかけは本当にシンプルで、「面白そう」だと思ったからです。戦略的というより直感的でしたが、『魔改造の夜』に挑戦することで化学反応が起きると感じたのです。
伊藤 :
私は、スリッパチームリーダーの阿部さんから「一緒にやってほしい」と声をかけてもらいました。チームのまとめ役を期待されていた部分もあったと思います。 
秋山 :
私は同期から声をかけてもらいました。突然だったので驚きましたが、せっかくの機会だと思い、参加を決めました。口コミや紹介で人が集まり、自然にチームが形作られていったことは、いかにもSUBARUらしい流れだったと思います。
藤貫 :
そこが大事です。上司からの推薦ではなく、「一緒にやりたい」という信頼関係でメンバーが集まった。口コミで仲間を募る方が面白いチームになるし、今後のプロジェクトのあり方としても参考になると思います。

同じ目標に向かって、必死に試行錯誤する日々

―― 魔改造期間が始まってからは、かなり濃密な日々だったと伺いました。

伊藤 :
本当に燃え尽きました。1カ月半という短期決戦でしたが、普段の業務を抱えながら、優先順位をつけ、時間をフルに使って試行錯誤しました。部署や専門の垣根を越えて人が集まり、同じ目標に向かって必死に取り組むことができて愉しかったです。 
秋山 :
ブランコチームも同じです。多くの失敗があり、特に試作機が壊れてしまった時は落ち込みましたが、その日のうちに失敗した時の動画やデータを持ち寄ってすぐに検討を始め、次の改善を考えていました。失敗を前向きに受け止め、成功の糧にできる雰囲気がありました。
藤貫 :
スリッパチームは最後まで心配でした。10案以上から絞り込んだ「羽ばたき」と「射出」、2つの案があって、どちらもやりたい気持ちはよく分かります。最終的に、チームとしての考えをまとめることができた際は、「チーム運営として花丸だ」と思いました。メンバーはそれぞれ強い想いを持っているため、2つの案に分かれて衝突することもあります。それでも「どちらかに決めようぜ」と腹をくくり、メンバーが自主的に役割を見つけて一つになった姿を見て、チームは100点満点の状態になったと思います。これができたことは、すごいことです。
伊藤 :
私は、「『魔改造の夜』への挑戦を嫌な思い出にしたくない」と仲間に伝えていました。誰もが経験できるわけではない挑戦だからこそ、後悔を残したくなかった。スリッパチームは案を絞る決断が必要でしたし、その決断をチーム全員が受け入れてくれたことは本当に大きかったです。最初から最後まで一貫して、チーム全員で共通の目標を持ちながら進められたことが、うまくチーム運営できたポイントだと思っています。

仲間との挑戦、そしてSUBARUらしさの追求

―― 『魔改造の夜』への挑戦で感じたSUBARUらしさを教えてください。

藤貫 :
一番強く感じたSUBARUらしさは、上下関係に縛られない関係です。良い意味で、私が魔改造の作業部屋を見に行っても、誰も作業を止めなかったのです。報告や説明に時間を取られるのではなく、困った時だけ相談してくれれば良い。そんな関係性が自然にできている点は、SUBARUらしいですね。そして、「任せて我慢する」マネジメントも重要だと、改めて感じました。権限委譲を推進したものの、上司への報告を強制してしまったら意味がありません。私が口を出してしまえば、それ以上の成果は出ないと思っています。それに加えて、現場のエンジニアの方が最新技術を知っています。限界を突破するためには、任せることも重要な要素の1つです。
伊藤 :
私も、任せる文化は確実に成果を生むと感じています。また、個人的には以前から、部署の雰囲気をより柔らかくしたいと考えていました。その背景には、私の部下には、他部署から雑談レベルで気軽に相談してもらえるような存在になってほしいという想いがあります。そのためには、上司である私に人脈があり、日頃から他部署と連携して業務を進める姿を見せることが重要だと思いました。『魔改造の夜』への挑戦を経て、横のつながりができたこともあり、他部署との連携が強化されたと実感しています。
秋山 :
私は、「考えることを愉しむ」文化を強く感じました。失敗したとしても、「良いデータが取れた」と喜ぶ人が多かったことが印象的です。クルマづくりでも同じで、SUBARUにはチューニングや実験を愉しむことができる人が集まっています。そのように愉しむ姿勢こそが、SUBARUらしさだと思います。
藤貫 :
本当に、皆イキイキしていました。真剣に、そして愉しんで魔改造に取り組んでいましたよね。目標に向かって進めていくうえで、修正しても良いし、失敗しても良い。そこから学べば良いのです。私自身、若い頃は失敗ばかりしましたが、その失敗が今の糧になっています。若手の皆さんには、「もっと失敗して良い」と伝えたいですね。

挑戦した先に得た学びとSUBARUの未来

―― 『魔改造の夜』への挑戦を通じて、どんな学びや気づきがありましたか?

伊藤 :
『魔改造の夜』への挑戦を通じて、「まずやってみよう」という姿勢が強くなりました。また、今回築いた横のつながりは、早速普段の業務でも活かすことができています。実際に、部署を超えた協力によって、コスト削減や開発スピードの向上につながった事例もあります。
秋山 :
私は、「自分の影響力を狭く見積もっていた」と気づきました。役職や担当領域によって自分のできる範囲に線を引いてしまいがちでしたが、仲間を募ればもっとできる。今回の経験はその自信につながりました。
藤貫 :
現代ほどの解析技術やツールがなかった1980〜1990年代のSUBARUには、自由な開発文化がありました。今回の『魔改造の夜』への挑戦で、改めて「自由な開発文化の血は、今も流れている」と強く感じました。失敗するかもしれないけれど、とりあえず挑戦してみる。失敗から学び、挑戦を繰り返す姿勢は、昔も今も変わらないSUBARUのDNAです。そして未来に向けては、「生産性=効率」ではなく「生産性=成長」と考えたいです。業務以外に、自己成長や挑戦に充てる時間を増やすことで、組織の力は上がります。時間を削ることより、挑戦して新たな価値を創造する。これがSUBARUの未来に必要だと思います。 

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