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平成11年12月10日

富士重工業 表取締役社長 田中 毅 スピーチ


富士重工業の田中でございます。

報道関係者の皆様には、急なご案内にもかかわらず、多数、ご出席いただき誠に有り難うございます。

本日、ここに、ゼネラルモーターズのワゴナー社長と、両社の提携について発表できますことを非常に嬉しく思っております。

さて、皆様ご承知の通り、当社は1953年に航空機メーカーを前身として設立され、航空、バス、鉄道車両、汎用エンジンなどの事業を展開、1958年に軽自動車「スバル360」にて自動車事業に参入し、以来、総合輸送機器メーカーとして、歩んでまいりました。そして、モータリゼーションの進展に合わせ、自動車事業のウエイトを高めながら、順調に推移してまいりました。

しかしながら、1990年、主力事業である自動車事業が赤字に転落したことなどにより、経営再建に取り組むこととなり、1990年代前半は、非常に苦難の数年間となりました。当社では、この苦難を乗り越えるために、全社員が一丸となって幾多の課題に取り組み、その課題をひとつひとつ克服してまいりました。それは、特に4WDや水平対向エンジンといった当社のコアとなる技術に集中した商品戦略の展開、徹底した原価低減、そして国内外市場におけるレガシィを核とした拡販といったものでありました。まさに「選択と集中」に徹した数年間であったのです。

また、この間、当社は、世界ラリー選手権(WRC)にも参戦し、スバル独自の技術の研鑚に努めてまいりました。そして、1995年から1997年には、日本車メーカーで初めて、3年連続のマニュファクチャラーズタイトルを獲得。今年も、14戦中、参加メーカー中最多となる5勝を獲得するなど、4WDや水平対向エンジンの組み合わせがもたらす「走り」のベストバランスを世界の舞台で実証し、「スバル」ブランドを世界に広めることと多くのお客様の支持を得ることに成功してまいりました。

この結果、1990年代後半には、経営再建を達成することができたばかりか、1998年度の決算においては、過去最高の業績をあげることができました。

私は、当社が経営再建に取り組むべく、川合前社長を中心とする新経営体制がスタートした1990年6月に経営者の一人として参画いたしました。そして、経営再建に他の役員、社員とともに邁進し、6年ぶりの復配を遂げた1996年に社長に就任、以後、来るべき21世紀での生き残りを目指した中期経営計画である「TQF21」計画を策定し、推進してまいりました。その中で、今年度は、連結決算時代を迎えて、当社のみならずグループ全体の財務体質改善なども重点課題に加え取り組んでおります。

具体的には、取締役会の改革とそれにともなう執行役員制導入、国内市場における販売会社の統合、連結決算対策として、懸案となっていた一部子会社の含み損などへの諸引当の計上も今年度中間期で行ない、さらには当社グループ内における事業領域の整理・統合につきましても、年度内を目標に検討を進めております。

以上の通り、当社は、自主自立の経営基盤の確立に一応のめどをつけつつあると考えますが、長期的に見れば、世界的な自動車メーカー間の競争がますます激しくなる中で、当社が、これからも勝ち残り、着実に発展を遂げていくためには、どのような方策があるのかを見極めることが極めて重要と考えました。そして、経営再建を達成し、過去最高の業績をあげ、業況が好調な今こそ、「存在感と魅力ある21世紀企業」への道筋をつけるのが私の責務であると認識し、今春より、この戦略の検討に取り組んでまいりました。

そして、為替動向や次世代技術の開発といった各種リスクを回避し、資本市場や格付けで重視される経営の安定と成長戦略の実現、さらには、当社独自の技術のグローバルな発展により次代を担う若い世代が活躍できる場の構築を可能とする、他社との戦略的提携を模索することにいたしました。

提携に際しては、ビジョンを共有できること、独自技術の活用の場が広がり、提携による生産・販売の拡大が見込めるなど成長を実現できること、そのうえ、当社の経営の主体性を確保できることなどを条件に話し合いを進めてまいりました。

この結果、当社は、このたび、世界一の自動車メーカーであるゼネラルモーターズとともに歩む道を選択し、今後、お互いに協力し合い、繁栄していくことを目的に、本日、資本提携を含む包括提携の契約書に調印する運びとなったものです。

協力の内容につきましては、ご案内の通りでございますが、当社は、安全・環境面での世界的な技術競争が激しくなる中で、より高度な走行制御を実現する4WDや、燃費効率の高い次世代オートマチックトランスミッションであるCVTといった他と比較し優位にある技術を有しており、この分野で、ゼネラルモーターズグループにおける中心的存在の企業として、最大限に力を発揮してまいります。逆に、ゼネラルモーターズが優位にある環境やITS関連などの技術につきましては、その協力を仰ぐこととなり、たとえば、当社においても直噴エンジンやハイブリッド車の研究・開発を行なっておりますが、これを機にその計画を見直し、これまでの研究成果を生かしながら、効率の良い投資を行なってまいりたいと考えます。また、これ以外にも、多人数乗りワゴン車やハイパフォーマンス車などの相互供給、海外市場における販売協力、グループ工場を活用した生産能力の向上と効率化など、1足す1が2でなく、3や4にもなるような協力関係を築いてまいりたいと考えています。

これらの協力関係により、当社は経営の自主性を保ちながら、生産・販売を拡大し、さらにグローバルな成長を図ってまいります。と同時に、それが世界一の自動車メーカーであるゼネラルモーターズの世界戦略にも貢献するものと確信しています。

今回の交渉を振り返りますと、当社は、たとえば4WDにつきましては、27年間、500万台以上の実績、CVTにつきましても15年間、140万台以上の実績を持っておりますが、これらの独自技術の評価は予想以上に高いものでした。4WDにこだわり、安全で信頼のおけるクルマ作りを心掛けてきた当社の技術力と「スバル」ブランドに改めて自信を深め、誇りをもつことができました。

今後も、この誇りを大切に、コアとなる技術にさらに磨きをかけ、「スバル」ブランドを一層高めて、着実な発展を遂げてまいりたいと考えております。あわせて、自動車事業以外で現在、事業展開している航空宇宙、バス、鉄道車両、環境システム、汎用エンジンなどの事業においても、その自立性を高め、コアとなる技術を磨き、その星のひとつひとつが燦然と輝く「スバル」のような企業でありつづけたいと考えます。

今、まさに21世紀の扉が開こうとしています。当社は、この新世紀でも、お客様に喜ばれる高品質で個性ある商品を提供し続け、経営ビジョンに掲げている「存在感と魅力ある企業」実現を目指して努力することを誓い、ご挨拶とさせていただきます。

有難うございました。

 

以上

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