2011年6月7日

富士重工業と東大、機体破損後の航空機の自動飛行実験に成功
~人工知能技術を用いたシステムにより、民間機を対象とした機体では世界初 ~

富士重工業株式会社(代表取締役社長:森 郁夫 本社:東京都新宿区、以下、富士重工業)は、東京大学(研究代表:鈴木真二、工学系研究科航空宇宙工学専攻教授、以下、東大)と共同で、飛行中に機体が破損しても安定した自動飛行が可能となる、人工知能技術を用いたシステムの実証実験に成功しました。民間機を対象とした飛行実証実験を成功させたのは世界初です。

航空機は高度な安全性基準のもとで設計、製造、運用されますが、まれに鳥衝突などによる破損が飛行中に発生する場合もあります。このような場合、通常はパイロットの高度な操縦技能により飛行を維持しますが、この研究は、そうした状況でも機能する次世代の自動操縦技術を開発することにより、さらに高い安全性を目指すものです。今回開発したシステムは、学習機能をもったソフトウェアにより故障の影響を吸収する自動操縦システムで、複雑な故障検知システム等を追加すること無く、機体破損のようなアクシデント後の安全性の向上に大きく貢献するものです。

今回の実証実験は、自動操縦中の実験機から右主翼の先端部約20%を分離・脱落させ、故障後もシステムの制御により安全に飛行を継続することを確認したものです(写真参照)。実験機は、小型ビジネスジェット機のスケールモデル(全長約1.4m)で、機体設計を富士重工業が担当し、飛行制御に必要なセンサーや制御用コンピューターの開発、ならびに機体製作を東大が担当しました。この実験機に、富士重工業と東大とでそれぞれ開発した、異なる方式のニューラルネットワーク(人工脳神経網)*1を用いた飛行制御ソフトウェアを搭載し、いずれの方式でも飛行実証を成功させました。

このプロジェクトは、社団法人「日本航空宇宙工業会」の取りまとめによる経済産業省の委託事業「航空機用先進システム基盤技術開発:先進パイロット支援システム」の一環です。また、システムの開発には、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の実験用航空機を活用しています。

富士重工業はスバルのブランドステートメント"Confidence in Motion"でお客様への「安心と愉しさ」の提供を掲げ、先進運転支援システム「EyeSight」を開発するなど、安全の追求をブランドのテーマの一つとしています。航空宇宙分野においても、今回の研究プロジェクトへの参加などをはじめ、革新的な飛行安全の実現に向け取り組んでいきます。

*1 生体の脳神経機能を模した情報処理手法の総称



飛行中に主翼の一部が分離しても飛行を継続する様子 (写真提供:東京大学)