2005年8月18日

富士重工業
開発中の 「ターボパラレルハイブリッド」と「リチウムイオンキャパシタ」の技術を公開

富士重工業は、自動車部門のスバルが取り組む先行技術開発の一端として、2007年度に試験的市場導入を予定しているハイブリッド車に搭載するシステム「ターボパラレルハイブリッド(略称:TPH)」と、これからの自動車用電池の可能性を広げる「リチウムイオンキャパシタ」を公開、将来の環境技術としての実用化を目指していく。

今回発表するTPHは、水平対向エンジンやシンメトリカルAWD(All Wheel Drive:全輪駆動)というスバルのコア技術を継承したクリーンエネルギー車の動力源として、富士重工業が量産を視野に入れて開発に取り組んでいるもの。
エンジンとオートマチックトランスミッションの間に、薄型で最大駆動出力10 kWのモータージェネレーターを挟み込む構造。ミラーサイクルを採用した水平対向ターボエンジンとモーターを組み合わせることで、ターボの過給域でもある中速以上の動力性能は従来通りの力強い運転を愉しむことができると同時に、エンジンの低回転域でのトルク低下をモーターアシストで補い、低速時に従来性能以上のトルクを発生させることで、全域にわたり優れた加速性能と燃費性能を両立する新しいシステムである。
同社が研究を進めていたSSHEV(シーケンシャルシリーズハイブリッド)と比較し、小型のモーターと比較的少量の電池を使用するためコストパフォーマンスに優れたシステムとなっている。
なお、TPHの優れた走行性能を実現するために、NECと富士重工業が2002年に合弁で設立した二次電池の開発会社NECラミリオンエナジーが開発に取り組んでいる高性能なマンガン系リチウムイオン電池の搭載を予定している。

また、リチウムイオンキャパシタは、従来のキャパシタの特長である大容量の電気を瞬間的に充放電できることや耐久性の高いことを生かしながら、課題であるエネルギー密度を飛躍的に増大させたものである。このリチウムイオンキャパシタは、負極にリチウムイオンを吸蔵する新開発の炭素材料を、電解質にリチウムイオンを、それぞれ使用し、あらかじめ負極にたくさんのリチウムイオンを吸蔵させる“プレドーピング”とよぶ手法により、負極の容量を増大させるとともに電位差を高め、正極の性能劣化を起こさずに高電圧を取り出すことを可能としている。
さらに、リチウムイオンキャパシタの原理は、最近のキャパシタの研究による大容量化のための新材料を正極に使用し、リチウムイオンキャパシタと組み合わせることで、理論上想定の容量のさらに倍の性能を引き出すことができる汎用性の高さも有している。
現在、試作セルによる性能確認を進めているが、将来、小型の自動車用リチウムイオンキャパシタを実用化すれば、バスやトラックなどの大型車のみならず乗用車などのハイブリッド車の需要や、一般的な鉛電池の代替需要にも応える可能性をもち、環境技術のひとつとして社会貢献が期待できる。

富士重工業は、環境問題を踏まえ、現在の化石燃料から再生可能な二次エネルギーとしての電気を用いたエネルギー源へと移行するという社会的なコンセンサスの中で、蓄電技術の発展こそが、自動車分野におけるハイブリッド車や燃料電池車、電気自動車の普及の可能性を広げる重要な要素と考えている。
そのため、蓄電技術という特定分野に開発を集中し、最低限の投資で合理的に技術的付加価値を得るために、NECラミリオンエナジーが開発する大容量マンガン系リチウムイオン電池をスバルのハイブリッド試作車や電気自動車スバルR1eへ搭載し、実証実験へと段階的に開発を推進、実用化、量産化に向け課題の解決に取り組んでいる。
今回のTPHやリチウムイオンキャパシタの研究開発も、こうした方向性をより強めていくものであり、環境対応技術の開発に真摯に取り組んでいく姿勢を示すものである。